ドーム時代のGIクライマックス■9808新日本プロレス
▼未公開作品「ドーム時代のGI(中野&坂井)」1998/8
ドーム時代のGIクライマックス(1998/8両国国技館)
◆坂井 久しぶりに「週刊ファイト」を読んでいたら、ターザン山本のコーナーに週プロ記者のコメントが出てたんだ。もちろんそれは、週プロ記者がターザンに個人的にコメントをしただけのものを、ターザンが勝手に載せてるっていう。佐藤正行記者の「(武藤VS天龍)ああいう疑惑のレフェリングはタイガー服部よりもミスター高橋のほうがいいんだよな」。斎藤文彦記者(フリーだけど週プロ専属)の「新日本は一見さんを相手にした見事な世界を作っている。『GⅠ』は興行的に大成功です」。
●中野 ほう。
◆坂井 ボクにとってGⅠは、「新日本の新日本らしさを守っている興行」だと思っているから、感じているのは“勝負”であったり“ストロングスタイル”であったりするわけ。こんなにグレードの高いシングルマッチが連発されるのはたまらないしね。そういうGⅠに水を差すような週プロ記者のコメントが(本人たちの本意でなかったとは思うが)出てしまったのは、ちょっと悔しい気がしたなぁ。
●中野 まぁプロレス記者らしい発言ではあるね。興行的側面でしか評価できなくなってしまっているというような…。ターザン山本の最近の書き物は~僕が目にするのはファイトの往生際日記、インターネットのマイナーパワーの2つだけど~ベースボールマガジン社というかせがなくなってより彼個人の下世話な興味に重点が置かれるようになってしまったみたい。文章を書いて相手にものを伝えるということはリング上での戦いを通じて観客とコミュニケートするプロレスの特性に通ずるものがあるのだけど、そういう意味で彼はプロフェッショナルではなくなってきたな。プロレスアルバムを作ってたころが1番よかったんじゃないか? 僕は新日本自体このG1まであまり観てなくて久しぶりだった。非常に楽しめた反面「新日本の新日本らしさを守っている興行」だけに、「あぁ、毎週新日本を見続けていたらもっと楽しめたのになぁ」とおもったよ。
◆坂井 でも、武藤のヒザの負傷くらい知ってたんでしょ? あ、でも中野クンは初日観てないよね。
●中野 うん。でも武藤がどの程度復調していたかは実際観てないので解らなかった。G1という1シリーズは3日間毎日観に行ったほうが断然面白い。例えば2日目橋本と戦う天龍は武藤に勝ちあがってこのリングに上がっている。判定は微妙ではあったが武藤と天龍が素晴らしい戦いをしたことには変わりがない。それを会場で体験した上で橋本VS天龍を観たかった。あと僕にとっては橋本についての最近の情報があまりなかったから初日の後藤戦も観た上でこの試合を観たかった。
◆坂井 ボクは3日間とも観たんだけれど、イチバンよかったのは武藤VS天龍だね。この1試合だけでじゅうぶん武藤がGⅠに出た意義を感じた。武藤が攻めに攻め込んだのがかなり印象的。前の健介との試合も、かなり武藤が攻めていたけれど、それをちょっと思い出させるような…。新日本の自力を天龍に教え込むような試合だった。
●中野 ほう…それは…観たかったね。
◆坂井 それにしても、このGⅠは初日から好試合の連続だった。このグレードの高さは、GⅠ史上最高だった。1回戦で破れた選手たちでさえ、自分らしさを発揮してた。山崎に負けた藤波も、めちゃくちゃ強くって、ドラゴン・スクリュー連発で山崎をボコボコにしてたからね。中西の蝶野への攻めもなかなかのもの。甲乙つけがたいがんばりだったけれど、シリーズ独自のものとして考えるなら、小島・山崎・安田のがんばりは目立った。
●中野 そうそう、僕は小島VS安田がよかったよ。ドーム以外で久々に観たからかもしれないけどお互いの技が高い精度でびしびし決まる、これぞ今の新日本。でも今年のG1は蝶野の影がもう一つ薄かったね。
◆坂井 うーん、蝶野はね、もう横綱相撲なんだよ。だから、蝶野にとっては優勝にこだわるよりも、蝶野の引き出しの多さを見せつけるほうが面白い作業になってくると思うよ。でも、1週間後に蝶野のIWGP挑戦(大阪ドーム)が控えてるところが、GⅠというシリーズへの感情移入を損なわせる部分は少なからずあった。
●中野 確かに存在感はバツグンだったね。僕のどこかに横綱クラスのレスラーなのだから決勝までいって当然という気持ちがあったのかもしれない。少し前までは蝶野に対してそこまでの期待はなかったけど。あと小島は頑張ったけど中西、西村の1回戦負けは痛いね。
◆坂井 新日本プロレスは、今まさにドーム時代。そして、GⅠ直後にもドーム興行が控えるパターンが昨年・今年と続いてしまった。GⅠで力を見せつけた、殊勲を勝ち取った選手が次のシリーズの主役を奪っていく。それが本来のGⅠの意義のはず。でも、ドーム興行では事前にカードを発表しなきゃいけないから、GⅠの勝敗とは関係なくドーム興行は行われる。IWGP選手権とは別の唯一の最強決定戦のGⅠなのに、ボクはどうも興行日程的に軽視されつつある印象も否めないんだ。
●中野 地方のプロモーターとの兼ね合いもあるんだろうね。東京だけを見たら1年を通して程よく日程が組まれていると思うんだけど。大阪や名古屋でドーム興行を行うとなるとどうしてもこういうバッティングが生じてしまう。しかしファンも選手もG1が1年で一番のイベントの1つだと思っている。
◆坂井 そこを調整していくのが、営業サイドの手腕になるかもね。まぁ、グレードの高い闘いの連続に、やっぱり選手はGⅠをダイジにしてるんだって思って安心はした。第1回の闘魂三銃士時代到来のインパクト。あれを超えるものを狙うこと。そんな野望を選手一人一人に持ちつづけてほしいし。
●中野 そ、だからこそ中西、西村に勝ち上がってもらいたかったなぁ。個人的には特に西村にね。西村的にはこれが最大のチャンスだったと僕は思うよ。レスラーとしての存在感はいい、後は結果がほしいところだけに。
◆坂井 蝶野時代の本格化とともに、第三世代の台頭も活発化するでしょう。昨年の天山、今年の小島と、芽は確実に出てきている。ただ、一方で、天龍・山崎あたりのふんばりもある。こういう大きな流れをなぜかGⅠスペシャルは受けきれてない気もするけど…。
●中野 うん、G1とG1スペシャルは全くの別物。G1の短い期間の中で選手は答えを出さなくちゃならない。そこがG1の過酷なところでもあるんだけれど。■□
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