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2005.03.27

観戦当日深夜報 3・26HERO’Sさいたまスーパーアリーナ大会

050326HEROSKANBANいったいボクらは何が観たいんだ? 前田日明は確かにそこにいた。さいたまスーパーアリーナで起こったこと・・・

               * * *

 ビール呑みながら前田談義に花を咲かせていたら、すっかり遅くなりました。観戦報を記します。

 オープニング。会場が暗転した中で映像が流れる。明るさを取り戻したリングにはいきなり(!)前田日明が立っていた。

 格闘技界の先輩たちへの感謝の言葉を口にした前田。「ここに帰ってくることができました」に対して、大きな拍手が起こる。少しばかりの前田コールが聞こえた。全選手入場式で選手を招き入れたのは、あのリングスの古田リングアナ。流れるテーマはリングスのテーマ。

 さっそく“復活”した、総合格闘技の先駆け団体「リングス」。

 客層をみていると、二つあるように思った。ひとつは、須藤元気に代表される新しい総合格闘界の旗手たちを観にきた若いファン。カップルたちもいるにはいた。

 だけれども、PRIDEなどの他団体リングよりも観客席が男くさい。これは紛れもなく、かつて前田日明を追いかけて、リングスを観てきたであろうファンが集結したことを意味する。それが二つ目。いや、人数的にはこっちを一つ目というべきだろうか。

 だからこそ、開会式のリングス復活のシチュエーションに、早くも盛り上がる。

 PRIDEの会場にくらべると、全体盛り上がり度は圧倒的に小さい。観客席も8割程度の入り。ただ、必要以上に盛り上がる必要なんてない。

 この日の会場は、さいたまスーパーアリーナなのに、「有明コロシアム」に見えた。“リングスの有明コロシアム”にしてはけっこう入っているなぁ、なんて思えた。

 前田日明スーパーバイザー興行と言っても、実質的にはK-1が契約してきた選手をこの日は借りたに過ぎない。前田流を本格発揮したわけじゃない。試合カードへの期待ではなく、前田日明が何をやるのかに注目して足を運んだ人も多かったのではないか。かなり特殊な観客が多くつめかけた中で進んでいく。

 いったいボクらは何が観たいんだ?

 第1試合。古田リングアナがヴァレンタイン・オーフレイムの肩書きを、独特の言い回しで「リングス・オランダっ」と告げる。試合開始。今の格闘技界では少ないシーンともなった足関節の攻防。まるでリングスみたいだと思ったところで、「リングス・オランダ」じゃないほうの大山峻護が逆に足関節でギブ・アップを奪う。

 そうそう、この日は5分ラウンド制なので、お約束の「5分経過!」は残念ながらなし。

 第3試合。リングス参戦経験のある宇野薫が、ヨアキム・ハンセンと対峙した。最終ラウンド。客席から「いい試合だぁー!」というなつかしい声がかかる。終始宇野が試合の主導権を握っていたけれども、攻めきることをさせないハンセン。残り1分を切ってから、ハンセンのヒザ蹴りが見事に宇野に炸裂。1分以上立ち上がれない宇野。だけれども、魅せ続けた宇野の復活を待つ観客。宇野が立ち上がったときに起こった拍手。そして、勝利できなかった宇野は観客に頭を下げる。あたたかい拍手。

 第6試合。B.J.ペンに判定勝ちしたLYOTO。ブーイングが起こったけれども、RYOTOは「ゴメンナサイ」と口にする。足りないものを謙虚に自覚する選手たち。「俺が、俺が」という世界のはずなのに、ちょっと違う雰囲気で試合が進んでいく。

 第8試合。ボブ・サップvsキム・ミンス。キムが意外だがパンチ連打でサップを追い詰める。顔面を腫らしたサップがリングドクターチェック。再開したサップはスグにキムにパンチ一閃。これがキッチリ入り、サップは一発で勝利をモノにした。

 すっきりとした決着なれど、この勝利をどう位置づけたらいいのか。そのとき、前田の表情が画面にアップになる。途中の試合で実は気になっていた。

 大きな背中。赤いブレザー。

 それが前田日明である可能性はとてつもなく大きかったのだけれども、初めて画面にアップになったことで確定した。引退後にリングスで審議委員を務めていたときの“正装”だ。

 「マエダー」四方から前田に降り注ぐかけ声。前田はリング上に目をやりながら、何度もうなづいている。前田の中で、サップの闘いぶりにどこかしら納得できるものがあったようだ。

 メーンイベント。秋山成勲vsジェロム・レ・バンナ。倒したら秋山の勝ち。だけれども、立つたびにバンナが攻め込む。この日のバンナは堂々としていて、K-1を背負う者としての自信と風格を持ち合わせていた。バンナの打撃と秋山のグラウンドで、なかなかいい勝負となる。最後は秋山のKO負け。

 振り返ってみると、宇野vsハンセン、秋山vsバンナがいい試合だった。

 試合内容は出たとこ勝負の今回の興行の中で、“いい試合”を“いい試合”として新鮮な気持ちで向き合えた。なんだか、よくも悪くも、総合格闘技がこれから誕生する瞬間に逆戻りしたような不思議な気持ちで試合を観ることができた。

 だけれども、何かが足りない。

 全試合が終了。アナウンスにより閉会式の開催が告げられる。わずかばかりの帰途につく観客もいる中で、多くの観客がまだ残っていく。赤いブレザーの前田がリングに上がった。何人もの選手と笑顔で会話している。全選手の記念撮影。前田はセンターに位置している。ネットワークの復活を感じさせるシーンではあるが・・・。

 「以上で閉会式を終わります」

 アナウンスに「えー」という声があちらこちらでする。けっして少なくない観客が、その瞬間を待っていた。オープニングだけでは物足りない。前田の言葉が聞きたいのだ。なのに無情なアナウンスによって閉会に向かおうとしていた。そういえば、前田の引退興行のときも、前田はそっけなかったな、なんて思っていたそのとき。

 前田が腕を伸ばした。マイクを欲しがっている。観客と選手たちへの感謝の気持ちを自分の言葉で語る。そして・・・。

 「自分の目で最強の選手を発掘したいと思います!」

 起こる、大歓声。続けざまに、ボクは「マ、エ、ダッ!」と速攻叫んでいた。まわりが同調しつつ起こっていった大前田コール。この日いちばんの前田コールがこのとき起こった。

 花道に引き揚げていく前田を見届け、すべての“観たかったもの”を完了できた満足で一斉に会場を後にし始めた観客。いや、一部の客は「かける曲が違う!」と突っ込んでいる。キャプチュード(現役時代の入場テーマ曲)は最後までかからなかったけれども、それは次の楽しみとしてとっておこうじゃないですか。

 田村潔司、クリス・ドールマン、ヴォルク・ハン、佐竹雅昭、カール・ゴッチ、金原弘光・・・誰も来場しなかった(気づかなかっただけかな)。だけれども、前田日明はたしかにそこにいたし、自身の意思によって前田は観客と向き合った。

 足りなかったものを満たしたボクたちは、それぞれの場所で前田談義をしてきた3・26の夜。観たかったものもこれだったんたな、と思って帰路についたのだった。

■□T.SAKAi
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ご来場ありがとうございました!

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