プロレスは八百長なのか?/真理の疑問
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真理mari =質問する人
毎週土曜日は、「プロレスのことがよくわかんない」真理がプロレスをチラ見して感じた疑問をぶつけて、カクトウログの人に答えてもらう・・・
「真理の疑問」の日ですっ
[写真]ウォッシュタイプやセミハードタイプといった色んな種類のチーズにハマってます☆前はこんな臭いの(>_<")って思っていたけど、最近はその匂いにちとハマり気味(^^;) ワインとまた相性がいーんだな♪
(>_<) (>_<) (>_<)
真理(*_*):
今回の疑問はちょっと勇気のいる内容かも。
この連載を始めるようになった初期のころに
真理の父親に《プロレスってどんなイメージある??》って
聞いたことがあるんです。
その時に父親が《八百長でしょ》って言ってたんですよね。
ぶっちゃけてしまうと、真理も微妙に怪しんでいたんですよ。
だって馬場さんのチョップがマットに倒れ込むほど
痛そうには見えなかったし(-_-;)
ある意味この質問は常日頃から抱いていたものの、
批判的な内容としてとられてしまうのが恐くて出せず
じまいだったんですよ。
確かに観戦しているお客さんの期待に応える
パフォーマンスという要素なんかは必要だとは思うんだけど、
最初からどっちが勝つっていう
勝負のシナリオ的なものがある試合って実際あるんですか~??
予測できる範囲内でよいので教えてくださーい!
お答え:
【八百長】真剣に勝負しているように見せかけながら、実はあらかじめ示し合わせた通りの結果に導くこと(福武国語辞典)。
プロレスが日本に上陸したときからついて回る「八百長説」。このことについては、ここ数年、元レスラーやレフェリー、団体関係者からの「暴露本」が出版されたのは記憶に新しい。その全てを読んだわけではないけれど、「プロレスは予め筋書き・勝敗の決められたスポーツだが、だからといってプロレスがつまらないというわけではない。やはりプロレスはすばらしい」(だから、プロレスに関わってきた自分にも肯定的)といった内容が多かったような気がする。
でも待てよ、そんな単純なものなのだろうか? こっちは30年もプロレス観続けてきたんだぞ。今さら、「プロレスには筋書きはあるが、すばらしい」なんて真相を“暴露”されても、ちっともうれしくないぞ!
知ってるっていうの、そんなこと。
知ってて30年も観てんだよ、プロレス!
プロレス・ファンは、「プロレスは筋書きのあるドラマである」と言ってしまえばどれほど楽だろう、と思いながらも、なぜロープに振られたら戻ってくるのかとか、凶器攻撃をレフェリーはチェックしないのかとか、対抗戦のエース同士の対決は1勝1敗のイーブンになるのかといった疑問に、自分なりの答えを見つけることで、自分の中でプロレスを肯定してきたんだ。「1+1=1」である、という矛盾に対して、「考え方や視点を変えれば、1+1=2でなくても、1+1=1でも正しいのではないんだろうか?」というのが、我々ファンにとっての「プロレス」というジャンルだ。
ここでは、プロレスが八百長かどうかよりも、日本のプロレス団体(特にメジャーと呼ばれる団体)がなぜ、リアルファイトとも、ショーとも言えないどっちつかずのポジションで、その立場を曖昧なままにせざるを得なくなってしまったのか? について、僕なりに考えてみたい。
八百長に対する最大の回答とは?
個人的には、インディーズ、特に大仁田厚がブレイクしたときに、「プロレス」は、その立場をハッキリさせるべきだったと思っている。格闘系のUWFが登場したときはまだよかった。第一次UWFを経由した前田や高田達と新日本の交流戦は、伝説の前田vs藤波戦や高田vs越中戦など、好勝負も生まれた。お互いがお互いの領域に歩み寄ることで、「真剣勝負」を標榜していたUWFと“キング・オブ・スポーツ”新日本の間のグレーな部分はグレーなままで済んだし、ファンは「前田はやはり強い」「いや、ジャンボ鶴田なら、前田と互角に戦えるのでは?」などと盛り上がることができた。
また、藤波や越中がUWFと対等に渡り合うことで、純プロレスラーの新しいスタイルへの適応能力の高さをアピールすることもできた。格闘技色の強いプロレスが出てきても、決して純プロレスが廃れることはない。そう確信したくらいだ。
しかし、デスマッチを売り物にするFMWが出てきたとき、週刊誌と連動した大河ドラマのようなストーリーラインを用いた、大仁田厚のハチャメチャなデスマッチ路線に対して、新日本や全日本は無視を決め込んでしまった。「あんなものはプロレスではない」と。
僕はここに大きな間違いがあったような気がする。第一次UWFの時のように、デスマッチを取り込んでしまえばよかった。「あれもプロレス、そして自分たちのやっているものも同じプロレスですよ」と。
メジャー団体は、あたかもインディーのプロレスだけが「作り物=にせもの」のような扱いをしてしまった。
プロレスは異分子と交わることで、「プロレス」本来の輝きを保ち続けてきた。新しいジャンルや文化を取り込むことで、「全てを超えたものがプロレス」と世の中に対して言い切ることができた。「全てを超えたもの」と言い切ることで、「八百長」に対する最大の回答をしていた(と僕は思っていた)プロレスが、(明らかに真剣勝負ではない)インディー・プロレスにソッポを向いてしまった。プロボクシングの現役世界王者のモハメド・アリをプロレスのリングに上げたこと、あれこそが「プロレス」なのだ。それなのに、影響力の大きくなりすぎた大仁田厚を新日本も全日本もリングに上げようとしなかった。(一部時期を除く)
あのとき、「自分たちのプロレスも大仁田と同じプロレスである」と認めず、あくまで「真剣勝負」という表向きの主張を変えようとしなかった保守的なメジャー団体よりも、新しい価値を生み出そうと実験や冒険を繰り返す弱小インディーに声援を送るファンがハッキリ存在するようになったんだと思う。僕自身この時期を境に、新日本や全日本のメジャー団体支持から、はなから「真剣勝負」とは別次元で勝負するFMWや、究極のイデオロギー闘争とも言うべき、業界全体での団体対抗戦を行った女子プロレスを中心に、プロレスを観るようになったんだ。
大仁田厚以外にも、FMWの伊藤豪レフェリーや大日本プロレスの登坂営業部長といったスタッフ、松永光弘や高木三四郎といったインディーのカリスマ的なヒーロー、さらには闘龍門という団体の姿勢にこそ、これからのプロレスのありかた、「プロレスは八百長」という世間との真摯な向き合い方を見た気がするんだよ。
プロレスというジャンルの醍醐味とは?
これまでの、真理ちゃんの疑問に対する回答も、「それはね、プロレスがショーだから敢えてやってるんだよ」と言ってしまえば、それで済んでしまうものなのかもしれない。しかし、プロレスに大切なのは結果ではなくプロセスだ。ある決められた結果に至るまでのプロセスのリアリティこそが、プロレスというジャンルの醍醐味だ。
「リアリティ」と「リアル」は違う。
マッチメーカー(対戦カードや勝敗を決める人)は、一体何を考え、この試合を組んだのか?
レスラーは他人から与えられた“勝敗”の中で、何を表現しようとしているのか?
今のプロレスに決定的にかけているのはここだと思う。
事前発表もままならない状況で東京ドーム大会を行うことに、どんな意味があるのか?
十分な予告もなく、インディーのリングにメジャーの選手が出場することに、我々はどんな感情移入をして試合を見ればいいのか?
「いいカードを提供すれば、客は入る」ではなく、「いいカードを、いつ、どんなタイミングで発表するか?」が重要なんだよ。
リアル・ファイトなら、直前の発表でも試合の結果を予想するだけで僕らは夢を見ることができる。でも「どんな結末をむかえるか?」だけでなくそこに行き着く過程までを想像することが「プロレス」なんだ。
カード決定までのいきさつ、カード発表記者会見での選手のコメント、試合当日までの両選手の言動、前哨戦の勝敗、当日のレフェリーは誰か?
第何試合で行われるか?
そして試合のプロセスは?
セコンドの介入や、不可抗力に見せかけたアクシデントはどう盛り込むのか?
決着は3カウントか、ギブアップか、それとも反則なのか?
試合後にの2人の因縁は解消されるのか、今後に引きずるのか?
そして選手のコメントは...?
こうした楽しみを与えてくれないのが、今のプロレスなんじゃないだろうか?
真理ちゃんのお父さんの言う、「あれは八百長でしょ?」という一言は、一般社会がプロレスに対して抱いている感情を端的に表していると思う。そして、それは50年前から変わらない。もし、「真剣勝負とみせかけていても、真剣勝負でないこと」を公表し、「あらかじめ示し合わせた通りの結果に導く」ために、一体何を「示し合わせた」のか?を想像しながら、結果を予想する、そんなファンが増えたら、プロレスは全く違うエンターテイメントとして生まれ変わることができるだろう。
僕が最も好きな試合・・・猪木vs藤波
最後に、僕が過去30年間で最も好きな試合をひとつ紹介しよう。
▼1985年9月19日東京体育館
アントニオ猪木vs藤波辰巳
所属選手の大量離脱で団体存続の危機に立たされていた新日本プロレス。これは演出でもなんでもない事実。そうした状況下で究極の師弟対決は唐突に実現した。ファンはあまりの唐突さに戸惑いながらも、「この時期に敢えて実現するからには、遂に藤波の師匠超えが見られるかも?」とひそかに期待。しかも、レフェリーはルー・テーズと発表。これは猪木の師匠・カール・ゴッチとの「師匠超え対決」の再現であり、藤波が猪木を破ることを、個人的には確信。しかも猪木は、「藤波が自分に勝てばゴッチからもらったベルトを藤波に譲る」、と公式発表。
試合はまさにゴッチvs猪木戦を彷彿とさせる展開に。若さで攻める藤波。老獪なテクニックで試合の主導権を渡さない猪木。前半はグランドの攻防、中盤での長い四の字固めのハイライトを挟んで、最後10分は大技の応酬。
藤波の技を全て受けきる猪木。最後は三度の卍固めの末、絶対権限を持つ伝説の王者・ルー・テーズのレフェリーストップで猪木の勝ち。試合後は坂口征二の胸で感極まる藤波。悪役の上田馬之助がリングに上がり、普段の因縁を越えて、猪木、藤波の健闘を称える(ルー・テーズは、「上田のアドリブ」と表現)。試合後、藤波は「新日本の将来を考えたら、猪木さんに対して非情になりきれなかった」とコメント。僕の予想は見事に外れ、結局、猪木が藤波にシングルで敗れるストーリーを許したことは、猪木の引退まで一度もなかった・・・。
この試合には、「八百長」論争を超えた、当時のプロレスのエッセンスが全て詰まっていると思う。猪木という人間の凄み。藤波という人間の優しさ。ぜひ、真理ちゃんのお父さんに見てほしいな。
「真理の疑問」第40回はここまで。
次週土曜に続きます!
★☆ 今週の回答者 O.FUJIi
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■昼休み
午前の仕事を終えて昼食を済ませ、職員たちはおのおのに休息をとっている。机に突っ伏して眠っている田辺文孝の頭を軽くはたく武玲人。
文孝「(不機嫌そうに)な、なんスか?」
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