アレクサンドル・ヒョードロフさん、死去
対戦相手を壊し続けたコマンド・サンボ・マスター。現役を引退していたにもかかわらず、前田日明に熱望されて51歳でリングスに立つ。グレイシー柔術家と対峙した伝説の男の訃報・・・
[写真]1997年6月21日、リングス有明コロシアム大会パンフレットから。胸には「RINGS」の文字
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アレクサンドル・ヒョードロフさん、61歳で死去。ネットに乗って伝わった訃報。
・ NHBnews PRO:【★その他★】 “伝説のサンビスト”ヒョードロフ氏 死去 < BOSE - livedoor Blog(ブログ)
・ 骨を折れ(悠々として急げ:SKアブソリュート 松本天心ブログ)
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先日、ロシアから訃報が届いた。
俺が師と仰いだ人物が亡くなったのだ。
アレクサンドル・ヒョードロフさん。61歳で人生を全うした。
ヒョードロフ師は、サンボの第1回世界チャンピオン。強烈無比な関節技を持ち、壊し屋として名を馳せた偉大なる達人だった。
10年ほど前にリングスにコーチとして招聘されており、当時の前田道場の選手達にも教えを施している。
俺も自分の試合を裁いてもらった事もあり、技術はもちろん、サンビストとして大切な事を短い間だったが教えて頂いた。
「お前は関節を極めようとしているが、それではダメだ。試合では逃げられる事がある。」
「ではどこを極めればいいんですか?」
「相手の体を掴んだところを極めればいいんだ。骨の途中だったら、両手で骨を途中からポキリと折れば相手は堪える事ができない。」
禅問答のようなやりとりだが、実際ヒョードロフ師に関節技をかけられると、体がバラバラになるかと思う。本当に関節どころか、骨の途中からヘシ折られるような恐怖を感じる。
もちろん、正確なポイントを抑えた関節技も多彩で、教わっていて飽きる事がない。
当時、リングスにもブラジリアン柔術&ヴァーリトゥードの黒船が来襲し、ロシア勢もその餌食になっていた。
弟子の惨状を見かねたヒョードロフ師は「俺がやってやる」と老体に鞭打って、ブラジリアンの若い強豪を相手にヴァーリトゥードを行ったのだ。
負けはしたものの、サンボの誇りを守ろうとする姿を見て、俺は震えをとめる事ができなかった。
「サンボの関節技だけが本当の関節技だ。お前はもっと関節技を学ばなければならない。」
ずんぐりむっくり太鼓腹のおっちゃんなのだが、その肉体から発するオーラたるや、まさしく生ける伝説だった。
ウチで頑張っている若い選手達に一度でもヒョードロフ師の伝説の技を体で感じてもらいたいと思っていたのだが、それが今となってはかなわぬ夢となってしまった事が悔やまれてならない。
巨星墜つ。
合掌
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たった一度、日本でのファイト。ボクは会場で観戦した。
1997年6月21日、リングス有明コロシアム大会
「FIGHTING EXTENSION 1997 VOL.4」。
こちらに記録がありました。
・ リングス6.21有明大会 第五試合
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コマンド・サンボ・マスター、相手選手を壊し続けたがため、大会出場を続けることができなくなったという小さな巨人「アレクサンドル・ヒョードロフ」。年齢51歳。既に現役を退いて久しい。にもかかわらず、前田日明をして、「格闘技ってこんなに怖いものなのかって感じるかもしれない」「一線を越えて凄惨なことが起きたら・・・今回のヒョードロフさんははっきり言ってそれができる人だからね」(週刊プロレス97.7.1号)といわしめる怪人である。
この達人の登場によって、昨年8月の、ところも同じ有明大会での、屈辱への落とし前というテーマは、一気に、「伝説対『何でもあり』の猛者」というミステリアスなムードを帯びることとなった。達人はやはり底知れぬ恐ろしさを持っているのか。それとも、所詮は、引退した老人に過ぎないのか。
結論から言えば、ヒョードロフは、10分10秒、まるで「テン・ミニッツ・パスト」のコールを待っていたかのようなセコンドのタオル投入によって破れ去ることとなった。
テレビカメラに向かって勝ち誇る髭面のアジウソン・リマ。
これが世紀の一戦の結末である。
では、ヒョードロフは、ただの引退したロートル格闘家に過ぎなかったのか。内容からみる限り、それは明らかに間違いだ。試合開始直後、牽制の打撃を双方が出す中で、いきなりリマのバランスを崩して転倒させ、足首を取る。あわてて逃げるリマ。ついで差し合いになるが、ここでも、投げを打ち、有利な体勢を確保するのはヒョードロフである。最初の1~2分程度は、明かな達人ペースであったと言っていい。
×アレクサンドル・ヒョードロフ(リングス・ロシア)
○アジウソン・リマ(グレーシー柔術)
10分10秒 TKO(セコンドのタオル投入)
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会場で見ていた限りでは、まるで力が尽きたのか、アクシデントがあったのか、唐突に負けてしまった。10分も踏ん張っていたとは思わなかった、それだけでも奇跡。
グレイシー柔術家が猛威を振るいはじめた頃だった。前田日明によってプロレスから総合格闘技へとスライドしていったファンは、“リングス側”として立ち上がったヒョードロフに絶大な期待をする。
グレイシーは黒船のようなもの。えげつないグラウンド打撃も織り交ぜてくる。リングス流の華麗なテクニックで打ち破れ! 負けはしたものの、燃えたなぁ。
1997年6月21日、リングス有明コロシアム大会「FIGHTING EXTENSION 1997 VOL.4」。大会パンフレットから。
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アレクサンドル・ヒョードロフ
ALEXANDLE FEDOROV
リングス・ロシア 175cm/98kg 1945年11月14日生
ロシア・エカテンリンブルグ出身。
過去サンボの国際大会に30回以上出場、20以上のメダルを獲得している実力者。
その鍛えられた肉体から繰り出す華麗なサンボ・テクニックは、観る者を魅了するとともに、世界中の強者から“小さな巨人”と怖れられている。
現在、ロシア・サンボチームの専任コーチとしてエカテンリンブルグを中心に活躍、数多くのサンビストを育成している。前田選手がロシアに出稽古に赴いた際、その技の切れ、破壊力に感動し参戦を熱望していた。愛弟子であるミーシャの雪辱を晴らすべく「コマンドサンボこそ最強の格闘技」と本人自ら志願、今回の参戦が決定した。リングス・ロシアが威信を懸けて送り込んできた秘密兵器。
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リングスとともに闘った男。やすらかに・・・合掌。
■□T.SAKAi
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