ストロング・スタイル復興前夜なのか~IGF旗揚げ戦感想~
「猪木イズム、奇跡の復活」をほんの少し願いつつ、「大失敗興行の目撃者になるんだろうな」というやっかいな“事前期待”が充満。ところが、彼らは大会後に猪木と「ダーッ」をきめた・・・
・ <一夜明け会見>アングル、ジョシュ、レスナー(スポーツナビ)
・ カクトウログ: IGF「闘今BOM-BA-YE」旗揚げ戦、6・29両国速報観戦記まとめ
・ 観衆8426人 IGF「闘今BOM-BA-YE」(スポーツナビ速報)
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平日、あいにくの雨。既存団体のように試合内容の保障はない。「カップルでの観戦」も敬遠されたに違いない。それでも両国国技館に8000人以上の大観衆を集めた、IGF「闘今BOM-BA-YE」旗揚げ戦。
とんでもない客が集まっていたことは明らかだ。「猪木イズム、奇跡の復活」をほんの少し願いつつ、「大失敗興行の目撃者になるんだろうな」というやっかいな“事前期待”が充満する。ところが、彼らは信じられないことに、大会後の猪木に拍手とコールを送り、声を合わせて気持ちよく「ダーッ」をきめていた。
出場選手は総合格闘技経験者が多くを占めた。彼らによるプロレスは嘲笑の対象になることが予想された。「総合格闘技」と「プロレス」。両方の世界が独立して、それぞれのエキスパートがいることをボクらは知っている。それなのに、試合後あたたかい雰囲気に包まれたのはなぜだろう?
ひとつは、世界標準のメインイベント、カート・アングルvsブロック・レスナー戦。
レスナーにはバーディクト、アングルにはアンクル・ロックという必殺技がそれぞれある。試合では、これらの必殺技がどう飛び出すかというポイントがしっかりと押さえられていた。レスナーの最初のバーディクト狙いは、アングルがロープをつかんだため、抱えられたアングル自身がそのままトップロープ越しに場外に投げられるというサプライズを生む。次なるバーディクトは、アングルがDDTで切り返す。されど、3度目のトライでついにバーディクト炸裂。これをアングルがカウント2でキックアウトしたプレミアム・シーンが、試合のハイライトだった。
逆にレスナーの仕掛けは、逆アンクル・ロックとなる。これを切り返して放たれたアングルの本家アンクルは、アングルの勝利に本物の輝きを与えた。
また、他の試合では見られなかった「ロープに振る」というシーン、この試合ではあった。ロープに振られたら返っていくことが「自然」な姿となって観客の目に映る。ロープに振ることに市民権を与えるくらいに、アングルとレスナーは、フォーマットに忠実な動きをこの試合の中に積み上げた。
顕著なのは、このシーンか。一瞬でタップしたり落ちたりする総合格闘技と違って、「固め技に耐える」というのはプロレスに不可欠。鍛え上げた肉体で「攻める」「耐える」攻防に観客は興奮する。フロント・ヘッドロックを万力のような両腕で決めるレスナー、だんだんと腕がダランと下がっていくアングル。このまま失神かと思ったその時、アングルの腕がピクッと動く。“蘇生”にドッと沸く観衆。
その一方で、レスナーのブレーンバスターやニーリフト、アングルのスープレックスというハードヒット&ハイ・アングルが顔を出す。この緩急を含めた闘いに引き込んでいくことを、猪木は「観客を掌で転がす」と表現する。メインはまさに、猪木イズムを体現した試合だったのだ。
レスナーは新日本プロレスマットで何度か新日本の選手と闘ったが、今回の試合のグレードの方がはるかに上。それだけ、レスナーとアングルは、お互いを認め合った仲なんだろう。
ふだんWWEの試合を観ることがないボクは、これがWWEでの試合に比べてどうなのかはわからない。ただ、猪木に「日本のプロレスを学んでほしい」との声をかけられていたアングル。WWE登場前に猪木が何日間か指導したとされるレスナー。彼らなりの日本仕様はあったんじゃないだろうか。
おりしも、大会4日ほど前には、2人の盟友、クリス・ベノワが亡くなった。ベノワに替わって(ベノワを育てた)日本のファンへの“恩返し”をしたかったんじゃないか! それほどまでに、2人の試合は完成されたものだった。
くらべると、セミまでの試合の完成度は低かったと言わざるを得ない(Uスタイルを除く)。それでも観客の大きな不満につながらなかったのは、6分程度で試合が終了するテンポのよさが大きい。総合格闘技でも既存プロレスでもないものをみたわけであるが、不思議とそれが懐かしのストロング・スタイルとオーバーラップして見えた。
ストロング・スタイルは、レスラーへの強さへの幻影があって初めて成り立つ。「人気レスラーの所属団体分散」「総合格闘技という別ジャンルの出現」は、ストロング・スタイルを消滅させた。ところがこの点を、IGFは「総合で闘ったことがあるオールスターズ」を集結させることで幻影の代替とした。
対戦カードを当日発表にしたことも大きい。プロレスの試合オファーというものは、「誰と対戦してどんな試合を期待する」ってところまで込みで行われるものだ。ところが、「当日発表」では闘いのシュミレーションができないという緊急事態を生む。小川直也はこう発言している。
・ 第5試合 IGF PROWRESTLING「闘今BOM-BA-YE」(スポーツナビ)
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――対戦相手はいつ分かったのか
「当日だね」
――緊張はあったか?
「そうだね。本当に怖いよ、IGFは。今まで出てきた団体とは殺伐感が違うわ」
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総合の選手起用と、カード当日発表。これらが「ストロング・スタイルの復興」のような興奮をもたらした。計算だったのか、偶然の産物かわからないが、IGFマジックはこうして炸裂したのである。(もちろん、本当に選手にとっても「当日発表」だったのかの真相はわからないけれど)
ここまでくると、ハッスルと同じようなもので、どこまでが計算で、どこからが偶然だったのかはわからない。一寸先はハプニング。もはやイノキゲノムの度重なる延期、IGFカード発表延期やメイン白紙といったドタバタぶりまでも、計算だったのかなとさえ思えてくるから面白い。わざとドタバタして、日本中のブログにネタ提供したんだったら、凄まじい戦略だ(きっと、スタッフは非常識な運営に病気になるだろうな)。アングルvsレスナーが白紙になって「これよりも“落ちる”カードになるのでは」「レスナーがキャンセルするのでは」と思わせておいての“本当に実現”という展開には、一本取られた。
この大会を「ストロング・スタイル復興前夜」だと思いたい。だけれども、1回やったことで先入観がファンには出来上がる。今後の大会は、ちょっとやそっとじゃサプライズにならない。この旗揚げは「一夜限りの奇跡」になる公算が高いと言わざるを得ないだろう。
願わくば、このムーブに“実をつくっていく”メンバーがあらわれるといいんだが。猪木のストロング・スタイルを絶賛していた柴田勝頼と船木誠勝は、この輪に入らないんだろうか? でもなぁ、あんまり成功しちゃうと、猪木は事業にお金を流したりして、よからぬことが起こる・・・?
いずれにせよ、IGF旗揚げ戦。“金曜夜8時”の頃から見ているボクは、「プロレス」がみれたことが大満足だったんである。
※観戦記などリンク集
もちろん大会に否定的な見解もありますのでご参照を。
=ファン=
・ プロレス多事争論:IGF旗揚げ戦感想、これで良かったのか・・・?
・ 多重ロマンチック:IGF 闘今BOM-BA-YE 観戦記
=業界=
・ 須山浩継伯爵の身勝手日記:美容院~デパ地下~IGF
・ PRIDEファイター多数出場のIGFで…|ソリタリオの格闘技取材日記|スポーツナビ+
・ 小佐野景浩 maikai: IGF旗揚げ戦
・ ターザンカフェ 闘魂劣化
=スポーツ紙=
・ 猪木の最後の革命にファン戸惑い/IGF(ニッカン)
・ 本当にやったIGF!闘魂復活ダ~(デイリー)
■□T.SAKAi
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