時代がムタに追いついた~ハッスル・エイド感想~
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もはやどこまで意図したものなのか、あるいは“神試合”とでも呼ぶべきものなのか、わからなくなってくる。ハッスル・エイドの主役のバトンは、あの2人の間でトスされたのだ・・・
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化身から化身へ。
ザ・エスペランサーからグレート・ムタへ。
高田延彦から武藤敬司へ。
ハッスル・エイド2006から1年経った“2007”のベストバウトは、グレート・ムタ&RG vs インリン様&TAJIRIだった。
・ カクトウログ: 6・17ハッスル・エイド2007、さいたまスーパーアリーナ速報観戦記まとめ
・ ハッスル・エイド2007(スポーツナビ速報)
・ ハッスル・エイド2007(ハッスル公式)
ランプから出てこない魔人、ムタ登場までジラしまくる。登場したと思いきや、RGが前に出てブーイング、またジラす。出てきたと思ったら、インリン様との絡みはたっぷり。予想の先を行く緩急が、ボクらの目線をひきつけて離さない。
特に快感だったのが、ムタのフラッシング・エルボーや毒霧という基本ムーブにドッカンと沸いたこと! 記号として築いてきた年季が違う。既存プロレス団体ではあり得ないビッグアリーナで、いつものムタが声援をかっさらった。
ムチを使うことで、ムタと渡り合うインリン様。この両者の拮抗ぶりは“お約束”なのか“地力”なのか、そのギリギリを突いて来るムタ。両者の動きは不思議なほどに噛みあいつつも、徐々にムタが圧倒。プロレス界の先輩としての強烈な“おしおき”を、インリン様の秘境に食らわせた。
昇天させられたのは、本当にインリン様だったのか。観客だったのかもしれないのだ。
1年前のハッスル・エイド2006。思い起こせばあのときも、高田延彦のムーブがビッグアリーナで復活したことに沸いた。トレーニング・モンタージュでのフードをかぶっての入場。戦慄のハイキック。そのまま披露することに照れがあった高田はマスクこそかぶっていたものの、観客を揺さぶったのは高田ムーブだった。
プロレスは「記録」ではなく「記憶」なんだと人はいう。記憶に閉じ込められた残像が、最高の舞台で甦って強く輝く舞台。気がつけば、ハッスル・エイドはそんな場になっていた。
このような興奮を疑似体験できた試合として、まっさきに思い浮かんだのは、グレート・ムタvs小川直也。かつての新日本プロレス、名古屋ドーム決戦を彩った試合。小川が見事なまでに「柔道チャンピオン、プロレスではグリーンボーイ」としてムタと相対して、毒霧を浴び、指取り腕十字という半反則技に散った。
あのときの小川の“キャラ”の濃さに匹敵する登場人物を、ハッスルはしっかりと育ててきた。TAJIRIこそ既存プロレスの住人であるが、RGとインリン様は登場人物として記号という点で成長してきた。そして、ムタと関わることができた。ムタを輝かせることができた。
他の団体がけっして考えない、つくることができない世界の現出に、さいたまスーパーアリーナは酔った。
もしかしたら、ハッスル主催者は気づいているのかもしれない。観客を手のひらに乗せて転がすようなパフォーマンスが、純プロレスでは難しくなっていることを。どの時期からそれが難しくなっているかはわからない。ただ、アントニオ猪木の現役時代の晩年にグレート・ムタが登場していたことが、何かを暗示してはいまいか。
プロレスが、ずっとプロレスであること。そのために武藤敬司が編み出したのが、グレート・ムタだった。その存在は賛否両論。ムタが行き詰ったら武藤、武藤が行き詰ったらムタという“避難場所”があったから、存在が許されたともいえる。表裏の顔を使いこなすことで、“早すぎた”ムタは既存プロレスの世界を生き延びることができた。
されどご存知のように、ムタの試合は成功・失敗の両方が量産された。武藤の天才ぶりにおんぶにだっこ。キャラとキャラが存分なぶつかりあいを生まないと観客に受け入れられない。
その壁を、ハッスルという「大プロジェクト」が破りに来た。けっしてひとりのレスラーに依存するわけではない「ファイティング・オペラ」というアプローチが、やっとムタの思想に追いついたのだ。
同じような構図は、実は天龍源一郎とHGの構図にもある。既存プロレスの中で積み上げられたキャラと、ハッスル的空間の中で積み上げられたキャラ。ただ、観客が頭の中でリアリティを感じるためには、天龍に“仮面”をかぶせることが必要だった。素顔の天龍がHGに負けてしまう世界観はしんどいものがあった。
“化身”度が深い試合ほど主役となるのは、ハッスルでは必然なのだろう。
グレート・ムタの代理人、武藤敬司が、ハッスル・エイド一夜明け会見で口を開いた。(携帯サイトより)
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(ハッスル参戦から一夜明けて感想は?)
出てみて、いろいろ感じたことはあるよ。長所も短所も含めてね。ただ、それを全日本にどう生かしていくか。これから変わっていくとこで見てほしい。出てみてよかった。出ないと空気はわからないからね。俺個人としては、いい環境で、最高のシチュエーションのもと、いい仕事をした実感はあるね。自分自身を出すことができたことに、自分的に満足してますよ。
ハッスルは存在しているから、誰にも消すことができない。その中で、ハッスルの世界に入って、いろんなものを見てきた。まだ氷山の一角だけであって、それ以上、中に入っていくかはクエスチョンだけどね。
(エスペランサーという存在もあるが)
それもクエスチョン。今のところはノーとしか言えないよな。全日本でやらなきゃいけないことがいっぱいあるから。
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武藤にしか見えない「全日本プロレスへの生かしかた」があるとでもいうんだろうか。あのハッスルをやってしまったら、既存プロレスの限界が見えてきても不思議ではない。ただ、それを全日本社長の武藤が口にするわけにはいかない。
武藤敬司とハッスル。しばらくは、それぞれの闘いへ。
また逢いたくなるのか。それとも“恋愛と結婚は違う”を地で行くのか。この先、いったいどうなるんだろう? この気持ちは、エスペランサーを見せられたときとかなり近い。
■□T.SAKAi
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