テレビ朝日が猪木×アリ戦を検証~猪木の主張「がんじがらめのルール」がそのまま放映される
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33年前に行われた「アントニオ猪木VSモハメッド・アリ」。2/7(土)夜のテレビ朝日50周年記念番組で、同試合が特集の一つに取り上げられた。
この試合の検証については、『1976年のアントニオ猪木』(柳澤健著/2007年)がかなり詳しいが、同書でも触れられているように、同書以前では以下の(1)(2)の見解が有名であるといえる。
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(1)『真相はこれだ!』(祝康成著/2001年)~『週刊新潮』連載をまとめたもの
=記事の一部=
エキシビションマッチのつもりで来日したアリ軍団は、真剣勝負と知るや、ルールの改正を強硬に主張したのである。新間が交渉の様子をこう語る。「当初、公表されたルールは割と公平なものだった。しかし、直前になって、空手チョップ、肘打ち、投げ、タックルはいけない、と言い出し、試合前日に、こんな最後通牒を突きつけてきた。“片手か、肩膝をマットについての攻撃のみを許可する”と。しかも、このルールは表に出さない、と約束までさせられた。“条件が呑めないなら、アリは急にケガをして帰国することになるだろう”と脅されてね。試合は明日に迫っているし、もうどうしようもなかった」
(2)『アサヒ芸能』(2002年1月31日号)~新間寿氏の手記
=記事の一部=
猪木は先頃出版した本の中で猪木対アリ戦のルールについて触れて、そこでは、禁じ手のオンパレードになっているが、事実はまったく違う。実際のルールは「両者正々堂々と戦う」という前提で、急所への攻撃禁止、目の中に指を入れてはいけないなど、現在のプロレスでも当たり前のルールに過ぎなかった。それは今でも私が保存している書類を見れば一目瞭然だ。猪木が言う『がんじがらめのルール』などは存在しなかったのだ。もちろん猪木が“言い訳”するのもわからんではない。当時、試合内容は酷評されたし、あとになって外国のプロモーターが「猪木に切腹するよう伝えてくれ」と黄金のナイフまで渡されたことまである。実際、猪木も本当に深く落ち込んでいた。そんな彼に代わって私は必死に『過酷なルールだった』と説明し、彼の名誉を守った。
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この2作を引き合いに出しながら、柳澤健氏は『1976年のアントニオ猪木』の中で(1)はまったく真相ではないとし、(2)に肉付けしながら結論付けを行っていく。そのうえで、猪木がああいう試合しかできなかった(タックルする技術も勇気もなかった)こと、および、自己保身の発言に走って試合の公正さを貶めたことを批判した。
プロレスファンならば、これらの前提知識をもとに、2/7(土)夜のテレビ朝日番組を観たんではないでしょうか。
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■2009/02/07 19:00~20:54 の放送内容
■テレビ朝日 Gcode226552
50時間テレビ テレビ朝日が伝えた伝説のスポーツ名勝負
今明かされる舞台裏の真実~格闘技世界一決定戦!!猪木がこの一戦を成立させなければならなかった真実!!▽7時間33分の死闘…語り継がれる「10・19ロ×近」の熱きドラマとは
猪木はなぜあれだけ侮辱されながらこの戦いを受けたのか?あれから33年…猪木は初めて重い口を開いた。試合成立までのカリスマの苦悩・翻弄された日々…。男が背負っていた背景には知られざるドラマがあった!!プロレス技ほぼ全面禁止…がんじがらめのルールだったこと…あなたは知っていましたか!?プロ野球史上最も劇的なドラマ10・19とはどんな試合だったのか!?パリーグにもかかわらず視聴率は30.9%!!しかも民放で21時台「ノーCM」という大英断に踏み切ったテレビ朝日の真実…その決断の理由が今初めて明かされる!そこには衝撃事実があったのだ!!番組を立ち上げた男はドラマ制作で培った斬新なアイデアを次々と実行していく。女子ボウラーのスカートは短くひざ上20センチ…▽中山律子12球連続ストライクの大偉業と壮絶なライバルとの数奇な運命…パーフェクトの日、中山を重大なアクシデントを襲っていた!!
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結論から言うと、テレビ朝日番組は残念ながら前述の(1)にそって忠実に放映した。猪木の主張「プロレス技ほぼ全面禁止」がそのまま放映されてしまい、事実としては間違った番組となった。もちろん、これは番組表の見出しをみたときから予想できていたものだ。
“過激な仕掛け人”新間氏(猪木-アリ戦の立役者)までも、猪木と和解関係にある今、番組では(2)の主張をないものにして(1)に“戻って”いたのだった。
これを読んで初めて「テレビ朝日に騙された!」と思った読者もいるかもしれません。だけれども、プロレスでは主催者側がいかにファンを掌に乗せるかが問われる世界なんである。今回の番組に興奮したとしたら、それもまた“プロレスの面白さ”であることもまた事実でしょう。
微妙なのはテレビ朝日で、以下のどっちだったんだろう。
「いくつかの文献を当たったら猪木不利のルールだった。猪木さんのコメントを加えて番組にしよう」
「事実とは違うが、テレビ朝日視聴率の立役者である猪木さんの策略にそった番組に今回はしよう」
まぁ、前者だったんでしょうねぇ。
さて、タイムリーにも元ファイト井上譲二氏が猪木VSアリについて触れている。
・ 週刊マット界舞台裏'09年2月12日号 [inouejojiz110.krm] - 250円 : 武道・プロレス・格闘技 ファイト!ミルホンネット
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猪木自身も「時が経つにつれアリVS猪木が評価され始めた」と語っており、いまになって再注目されている猪木VSアリ。当時、『週刊ファイト』の準スタッフとしてこの試合の取材に当たっていた井上穣二記者は、この試合をどう見たのか・・・
アリ戦の2カ月前、新日本プロレス姫路大会の控室で見た猪木、試合4日前からアリが宿泊していた京王プラザホテルに密着、試合前日に行われた新間寿氏の囲み会見など、当時リアルタイムで取材をした記者ならではの裏話を公開!
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詳細は購入して読むべしなんだが、井上氏はなんと、アリ戦でのあの戦法を“アリ戦の2カ月前、新日本プロレス姫路大会の控室”で見たと記している! ここからも、「がんじがらめのルール」ではなかったことがわかったりもする。
また、この一戦が「真剣勝負」だったかどうかは、一般週刊誌から『1976年のアントニオ猪木』まで猪木自身や新間氏が取材元であるがために、これらの書籍レベルでは闇の中である。彼らはもちろん、真相を“墓場まで持っていく”のだから。
参考。
・ 2007.06.22 カクトウログ: 調査報道、敗北か。アントニオ猪木本人とシュート活字の返答
と言っても、猪木VSアリの価値がなかったわけではもちろんない。あの試合は従来のプロレス(業界でいうところの「ワークマッチ」)とは全く違う、打ち合わせができないまま“真剣”に戦った試合であった。
さらに言うなら、この試合がつくった猪木幻想・プロレスラー像は凄まじく、現在の総合格闘技へと続く日本ならではのプロレスラー・ファン思考に大きな影響を与えているのだ。
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