鈴木みのるのイライラは報われるか～全日本プロレス「2009 チャンピオン・カーニバル」総括

　全日本プロレス「2009チャンピオン・カーニバル」優勝決定戦、ＪＣＢホール大会を会場で観戦しました。
・　カクトウログ: 全日本プロレス「2009 チャンピオン・カーニバル」優勝決定戦ＪＣＢホール大会、速報観戦記まとめ
・　全日本プロレス「2009チャンピオン・カーニバル」優勝決定戦（スポーツナビ）

　最終戦しか観ていないのにエラそうな言い方になる無礼を許してほしいのだが…焦点が見えづらいシリーズだった。シリーズ前には鈴木みのると諏訪魔の舌戦、鈴木みのると高山善廣のGRENTAI対決などが話題となったが、終わってみれば諏訪魔も高山も4強から脱落。とすれば、和製エディ・ゲレロとも言うべき称号を得ようとしたカズ・ハヤシの物語が描かれようとしたんだろうか。

　試合内容は文句がない。なのに、ドッカンドッカンとはならなかった会場。目を凝らして観た試合なのに、爽快感なきファイナル。

　というのも、やはり前年のチャンカンが良すぎた。ブレイク前夜の棚橋弘至をつかまえた絶妙なブッキングと名勝負連発。対抗馬としての諏訪魔登場。両者が決勝へと勝ち進み、諏訪魔というニュースターを“新日本ファンによるゼンニッポンコール”が歓迎した。あれはもう間違いなく、チャンカンのグレードの高さを印象付けた。

　今年。鈴木みのるは何を語ったか。
・　第7試合　全日本プロレス「2009チャンピオン・カーニバル」優勝決定戦（スポーツナビ）
＃＃
・　「今日優勝したら高山選手と三冠ヘビーを懸けて戦うんですか？」って言うヤツがいるけど、お前らバカにしてるのか？　連戦連戦で全国何時間も走り回って、毎日毎日２０分も３０分も戦って、こんなあちこちケガして……自分の身と心を削って戦っているのに、予選会じゃねぇっていうんだ。ふざけるんじゃねぇ。やるわけねぇだろ。それとこれとは別の話だ。
・　そういうなら三冠戦やる時は毎回予選をやれよ。世界タッグやアジアタッグでも毎回予選をやれよ。リーグ戦をやってからオレたちのところへ（挑戦者として）来いよ。だろう？　オレが言いたいのはそれだけだ。
・　（次の目標？）違うだろ。オレが目標にするんじゃないんだよ。全日本プロレスに参加しているヤツらがオレを目標にするんだよ。勘違いするな。チャンピオンであるオレたちと、チャンピオン・カーニバルのチャンピオンのオレを目標にするんだ。だろう？
＃＃

　記者たちが三冠挑戦や目標を話題にしたのは当然だ。ネタが欲しかったのもあるし、“爽快感なき”チャンカン後の“答え”探しをしていたんである。記者たちやこんなことを書いているボクにみのるは迎合する必要はないんだけれども、観客との追っかけっこがプロレスであるならば、みのるはイライラしながらも、ボクらへの答え提示が求められていく。

　そして、何より自分にイライラもしているはずだ。

　振り返れば、みのるから三冠ベルトを奪った佐々木健介はまったく話題にならなかったし、その健介から奪った諏訪魔も空回りした。だからと言ってムタでいいわけないだろう！？　大好きなプロレスが、どうも自分の好きな世界にならない。ならばGURENTAIで価値基準を再生産するしかない。その決意の強さがチャンカン優勝だったんじゃないだろうか。

　そしてまた、カズも価値基準を創造しようとした。運動量やコンディションの一流さこそプロの証。全日本でコーチを務めているカズの主張が存分に発揮された最終戦。大舞台に説得力をもった躍動は素晴らしいものだった。

　鈴木みのるのイライラと、カズ・ハヤシの責任感。チャンカンは、全日本を次のステージに持っていくためのステップになってほしいし、ふたりはそのような舵取りが期待されるだろう。

　個人的には小島あたりが出てきて高山に挑戦表明くらいの爽快感を予想していたが外れた。ここで噛みつくのは、みのるの強さに対抗できる諏訪魔あたりか。だけれども、どうせだったらみのるには、ある種の“安住”をせずに、破天荒な動きを期待したい。団体の壁なんか全部取っ払って、“わかりやすいプロレスでいいのか”って問題提起を最近した中邑真輔あたりと組むのはどうだ！？

　まだまだみのるとボクらの追っかけっこは続くのだ。

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