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2009.05.04

アントニオ猪木『真実』書評~新事実なし。「がんじがらめのルール」の繰り返しにとどまる

 33年前に行われた「アントニオ猪木VSモハメッド・アリ」。テレビ朝日50周年記念番組『伝説のスポーツ名勝負』で同試合が特集の一つに取り上げられたのは、2/7(土)夜のことだった。
・ 2009.02.08 カクトウログ: テレビ朝日が猪木×アリ戦を検証~猪木の主張「がんじがらめのルール」がそのまま放映される

 同番組では、猪木VSアリの時間帯が最高視聴率をマーク。“猪木全面肯定型”猪木ファンの溜飲を下げ、“猪木マジック評価型”猪木ファンは戸惑った(プロレス村での主張を世間にまで押しつけてしまったため)番組であった。あれから2か月。

 番組で小さく起こった“猪木を称える世間的ムーブ”よ続けとばかりに、猪木本人(名義)による著書が発売された。

090408inoki▼new!アントニオ猪木 真実 (DVD付き)2009/4/8発売!あのプロレスの巨匠アントニオ猪木が伝説の対決、 「異種格闘技戦 猪木vsモハメド・アリ戦」の真実を自らによって語る! 「あの時」彼の何が起こったのか!?単なる自叙伝でも暴露本でもない! 静かにだが、沸騰するほどに熱く、真実を語った、 猪木自身による、猪木の魅力満載の超一級のノンフィクションが遂に登場!! アントニオ猪木ロングインタビューを収録したDVD付!!

 こちら読みました。

 書評という点では、残念ながら、『真実』というタイトルに値した内容なし。猪木サイドが主張する「がんじがらめのルール(プロレス技ほぼ全面禁止)」について新事実・新見解が出されたわけではなかった。もちろん、「がんじがらめのルール」という主張をひっくり返したわけでもなかった。これまで主張してきたことが、いまいちど“真実”として再プレゼンされたに過ぎない。

 この手の“猪木肯定”本としては、比較的メジャーなのは『20年目の検証 猪木-アリ戦の真実』(日本スポーツ出版社/1996年)となる(タイトルも似ている、プロレス業界は“真実”という言葉が好き?)。この『20年目の検証~』では、実現へのプロセスがドキュメントとして綴られているが、2009年版『真実』では、それが猪木本人の言葉という趣向で書き直された本という感じだ。拾っているセリフや項目が酷似している。

 細かく加わった事項としては、「東京スポーツ」紙1976.5/14掲載の極真会館・大山倍達氏との対話(「秘策を教えますよ。ローキックですよ」とアドバイスされる)、同紙6/25(試合前日)掲載の日蓮宗・日恵上人氏との対話(「アリのリーチより長いもので戦えばよい」とアドバイスされる)が添えられてはいるが・・・。

 一連の「がんじがらめのルール」掲載といい、これらの記事といい、後に酷評されることになる“アリキック”作戦への弁明を東スポはあらかじめ一生懸命やっていたことが理解できる(東スポは、猪木-アリのスポンサー)。まるでアリキック作戦をあらかじめ知っていたようでもある。

 ここであらためて整理すると、いわゆる「がんじがらめのルール」(アリ側の強硬押し付けによるプロレス技全面禁止ルール)は、その存在が疑わしい。当時、東スポのみにしか掲載されず、これを交渉にあたった新間寿氏は後の暴露本などで「実はルールの話は東スポに書かせただけ。そもそもそれどころじゃなかった」「実際のルールは『両者正々堂々と戦う』という前提で、急所への攻撃禁止、目の中に指を入れてはいけないなど、現在のプロレスでも当たり前のルールに過ぎなかった。それは今でも私が保存している書類を見れば一目瞭然だ」としている。

 議論の続きは、猪木-アリ関連の情報ソースに何か動きがあったら、別の機会にもやってみたいと思う。

 新たな事業を計画しているともされる猪木。
・ 週刊マット界舞台裏'09年4月30日号 [inouejojiz121.krm] - 250円 : 武道・プロレス・格闘技 ファイト!ミルホンネット
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 まず気になったのが、猪木が発売した『真実』(ゴマブックス)が異例の発行部数していること。モハメド・アリ戦に関する目新しい真実が記されているのか? それとも・・・? とにかく猪木にとっては、この本をベストセラーにするなんてことは小さな目標であり、猪木が本当に望んでいるのはその先にあるとてつもない計画だったのだ!
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 “異例の発行部数”に関しては、出版関係の事情通に聞いてみたところ、「”猪木著”という最大の売りが重要と考えたため、猪木側からのお題目権利を得るために、名目上の初版数を異例の多大な数にしただけで、実際には刷ってないのではないか」とのこと。 なるほど、その初版数から逆算した印税を猪木に支払うことで、GOサインが出 たプロジェクトとも考えられる。

 いい本ならばボクも売れるようささやかながら援護射撃したいが、そういうわけでもない。とてつもない計画…うーん、大丈夫でしょうか。

 参考:猪木-アリ戦の検証はこちらが詳しいです。この一戦を語りたいのなら必携。
090225miruhon▼new!徹底検証!猪木vs.アリ戦の“裏” <電子書籍>テレビ朝日が開局50周年記念としてトンデモ番組を放送した。題して『テレビ朝日が伝えた伝説のスポーツ名勝負~いま明かされる舞台裏の真実』。テレビが伝えなかったアリ猪木戦の裏の裏を暴く!
・ カクトウログ: 猪木×アリ戦を考えることはプロレスを考えること~『徹底検証!猪木vs.アリ戦の“裏”』発刊

 さて、この「徹底検証!猪木vs.アリ戦の“裏”」でも検証されていたが、2009年版『真実』書評からはすこし離れて、この機会にアリのグローブについて掘り下げておきたい。猪木-アリ真剣勝負論者からは、4オンスグローブのことが話題となる。なぜなら、普段よりも軽いグローブをモハメッド・アリがつけてきたことこそが、アリが真剣勝負をしていた証拠の一つだとプロレスファンからは見られているからだ。

・ ボクシンググローブ - Wikipedia
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男子はミニマム級からスーパーライト級まで、女子はアトム級からフェザー級まで片方8オンス(227グラム)、それを超える契約体重の場合は片方10オンス(283.5グラム)のグローブを用いる。
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 この点について、知人のボクシングファンに質問してみた。

①「危険なパンチ狙い」
(4オンスという素手の拳に近い状態で殴ろうと本気でアリは考えた)

②「本気で殴る気が無い意思表示」
(4オンスで殴ると自らの拳が破壊される、だから猪木戦は本気じゃないとアリは示唆した)

 アリの意図はどっちだったのかと。

 ボクシングファンの回答。
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 まず、ボクシング関係者は、プロレスを自分たちとは別次元のものと考える傾向が強いので、プロレスとの異種格闘技戦というのは、「エンターテイメント」の位置づけで考えることが普通なのではないかと思います。エキシビションマッチといったところでしょうか。

 全てのボクサーが、ストイックに生き、クリーンファイトをしているとは言いませんが、アリならば(ボクシングヘビー級世界チャンピオン=世界最強というプライドにかけて)不正なことはしないと思われます。猪木が、アリのグローブにシリコンか何か入れていた旨の発言をしていましたが、そんな反則(ボクシングルールで)は受け入れないように思います。

 ただ、なぜ4オンスのグローブにしたのかは、サカイさんのメールにあった二つの見方①「危険なパンチ狙い」②「本気で殴る気が無い意思表示」に絞れば、②の方かなと思います。危険なパンチで相手に大怪我させようというのは、ボクシングの成り立ちからは当てはまりません。ダメージを与えるどころか、致死の可能性さえあることをやろうとするのは、考えにくいです。

 だとすると、③「つかまれにくい、小さいグローブを選択した」ということではないかとも考えられます。②ならば、本気ではなかったという推測につながりますし、③ならば、本気だったかも知れませんが、そうはあまり思えないのです(冒頭の考えからして)。

 一番大切な商売道具である拳を支える腕を守ることに徹したのかな。結果的に下半身が破壊されましたが。真相は当事者(アリのセコンド)しかわかりません。ボクシング関係者って、こうした話題をしゃべらないんですよね。

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 プロレスファンにとって「4オンスだから真剣勝負」と取りがちな点も、ボクシングファンにとっての常識から見れば覆されていく。

 これまで「猪木×アリ戦を考えることは、プロレスを考えることである」とボクは言ってきた。だけれども、ひょっとしたら「ボクシングを考えることである」というテーマもあるのかもしれない。

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