猪木VSアリ検証『Gスピリッツvol.12』レビュー~ ついにゴング派が歴史的一戦の“嘘”に触れた!
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アントニオ猪木vsモハメド・アリ。この一戦について、いわゆる既存プロレスマスコミは「圧倒的不利のルールの中で、真剣勝負を戦ってアリと引き分けた」と猪木の功績を称えてきた。そこに疑いの論調は存在することがなかった。ところが…。[記事全文]
▼new!Gスピリッツ Vol.12 6月26日(金)発売!特集はアントニオ猪木vsモハメド・アリ! ちょうど33年前の1976年6月26日、日本武道館において“20世紀最大のスーパーファイト”と呼ばれた猪木とプロボクシング現役世界ヘビー級王者モハメド・アリのミックストマッチ3分15ラウンド
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ところが、6月26日に発売された『Gスピリッツvol.12』は「アナタは世紀の一戦の虚と実を見抜けますか?」と投げかける。
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『Gスピリッツvol.12』
“史上最大のミステリー”を読み解く――。
【特集】アントニオ猪木vsモハメド・アリ
アナタは世紀の一戦の虚と実を見抜けますか?
■証言集-1
猪木の応戦表明から決戦当日の早朝まで
――熾烈な駆け引きの“表”と“裏”
・「神に仕組まれた闘い」はショーか、真剣勝負か!?
・“プロレスラー”アリの謎
・倍賞美津子と母・文子…女たちの猪木vsアリ
■証言集-2
1976年6月26日、午前11時50分
――運命のゴング、鳴る
・ミステリーキック~講道館とブラジルを繋ぐ壮大な格闘ロマン
■インタビュー~各ジャンルの識者が世紀の一戦を読み解く
・大橋秀行(元・WBA&WBC世界ストロー級王者)
「昔のボクシング関係者から“アリが騙し討ちにされた”と聞いたことがあります」
・中井祐樹(元・修斗ウェルター級王者)
「テレ朝の特番で放送された猪木vsアリ戦の映像を観て、不覚にも涙をこぼして…」
・武藤敬司(元・三冠、IWGPヘビー級王者)
「決して悪い“絵”じゃないよな。この試合は昔の映像みたいにまったりしてる良さがあるよ」
■証言集-3
アリのパンチ5発、猪木のキック96発
――静かなる決闘の果てに
・昭和51年、“総合格闘技の原点”はどのように報道されたのか?
・アリの密着したカメラマン、12日間の記憶と秘密
・「がんじがらめ」のルールは捏造だったのか?
■インタビュー~昭和の最強軍団、33年目の回想
・坂口征二
「俺が見たシューズは足の甲の内側だけ、蹴りが当たる部分に10cmぐらいの鉄板が入ってたよ」
・木村健悟
「足にゴムを縛り付けて、毎日、俺が猪木さんのアリキックを受けてたんだよ。あの痛さを知っているだけに…」
・ドン荒川
「藤原と計画してたんですよ。次のシリーズの開幕戦で遠藤幸吉さんを捕まえて袋叩きにしてやろうと…」
・栗栖正伸
「猪木さんと新間さんは試合ギリギリまでルールの話をしてたよ。俺、車の中で聞いてたから」
・佐山聡
「“寝転んで蹴るより、猪木さんは頭から…”って藤原さんに助言したら、殴られた気がする(笑)」
・大塚直樹
「私はジャッジペーパーの改ざんなんて絶対にしてません。猪木さんの勝ちにすることだって本当は可能だったんですよ」
【シリーズ】
実録――国際プロレス『ストロング小林と覆面太郎』
ジャイアント馬場外伝『ショーヘイ・ババと海外武者修行』
世界ふしぎ再発見『メキシコ編』
アリーバ・メヒコ『“青い矢”アニバル、残された千の遺産』
Dig it!『世界各国の戦前レスリング稀観本』
格闘写真美術館『格闘技世界一決定戦』ほか
■追悼――三沢光晴さん
■発売日 2009年6月26日
■価格 1200円(税込)
■出版社 辰巳出版
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猪木VSアリを取り上げるのであれば、『Gスピリッツvol.12』読者の多くは、かつてゴング編集部が出版した『20年目の検証 猪木-アリ戦の真実』(日本スポーツ出版社/1996年)の続編を期待したことだろう。同書は猪木ファンの絶大な支持を受けた。「圧倒的不利のルールの中で、真剣勝負を戦ってアリと引き分けた」功績をこれでもかと綴っているからだ。
なのに、今回の『Gスピリッツvol.12』は、最初のページのプロローグにいきなりこう書かれている。
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・ 何と言っても、この一戦はリアルとフィクションが幾重にも交錯し、さらに良質のファンタジーが散りばめられた「格闘ロマン」の金字塔である。結論を先に書くと、真相は永遠に謎のままだろう。
・ 本特集は、アナタの判断力と想像力、そして何よりもプロレスファンとしてのスマート指数が試される知的ゲームとしての『猪木VSアリ検証』である。
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長いプロレスマスコミの歴史上で、特に“アリとの一戦は猪木の貴重な真剣勝負だった”との論調が定着している中で、“フィクション”“嘘”“裏”という言葉をファンタジー活字系ともされる人脈が初めて躍らせた! その点については素直に(歓迎されるかどうかは別にして)、新しい一歩を踏み出したと驚かざるを得ない。
検証本として位置付けるならば、はっきり言ってズッコケる。結論を読者に投げっぱなし。プロレスファンに知的ゲームを問うていながら、自らは行間を読む知的作業を放棄している感もある。
だけれども、すべての素材を検討材料に上げようとする割り切った姿勢と、膨大な証言集には圧倒されたことも確か。そしてまた、同書のプロローグには、こうも書かれている。
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掲載された過去の資料から最新の証言まで、誰のどの言葉を信じ、どの部分を疑うかはアナタ次第だ。素直に受け取るも良し、裏読みするのも良し。(中略)そして、最後に信じる部分だけを繋ぎ合わせれば、アナタだけの“猪木VSアリ戦の真実”が完成する。果たして、それは真相にどれだけ近いものなのだろうか。
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では、真実を見抜くことに挑戦しようではないか。以下では、気になる事項を取り上げて検証することで、ボクなりの『Gスピリッツvol.12』レビューとさせていただきたい。
なお、検証にあたっては、現時点でこの一戦の謎解きをもっとも深く行っているタダシ☆タナカ氏の『徹底検証!猪木vs.アリ戦の“裏”』との照らし合わせも含めるものとする。
▼徹底検証!猪木vs.アリ戦の“裏” <電子書籍>テレビ朝日が開局50周年記念としてトンデモ番組を放送した。題して『テレビ朝日が伝えた伝説のスポーツ名勝負~いま明かされる舞台裏の真実』。テレビが伝えなかったアリ猪木戦の裏の裏を暴く!
プロレスファンには「薄くて素手に近い4オンスのグローブをつけてきたアリは本気だった」とされている件。『Gスピリッツvol.12』で大橋氏は改めて「たぶんアリだったら、4オンスだと手が入らないですね。特注だったんじゃないですか。(アリの拳も危ない?)ええ、危ないですよ」と発言。
ところが、なぜアリはそんなグローブをつけてきたのかという点への踏み込んだ検証が『Gスピリッツvol.12』にはないに等しい。思うに、相手へのダメージ云々以前に、まずアリは命の次に大切な拳を粗末にするわけがないと考えるべきだろう(実際にタイトル戦も控えていた)。つまりは、本気で殴らない、裏切らないという意思を相手やまわり(見識のある人たち?)にアピールするためにも、4オンスで出てきたと考えるべきだとボクは思う。この点については、当サイトでもボクシングファンの見解を載せたりしてきたし、一連のタナカ氏の検証本の論点にもある通りだ。
ちなみに、大橋氏は「これがエキシビションだったら、もっと面白くするでしょう」「アリもお遊びのつもりで来たのに、いきなり話が変わって真剣勝負になっちゃったと。僕は古いボクシング関係者から、そう聞いてますけどね。“騙し討ち”に遭ったという感じですよ」とも明かした。
これは概ね正しい。そして、猪木-アリ戦を業界ぐるみで錯覚させてきたしくみをよく表している。エキシビションか、そうじゃないか。二者択一で考えてしまうから見えなくなる。世紀の一戦について、ボクシング記者をはじめ多くの目が八百長視していた当時。打ち合わせやリハーサルができる環境になかったのが現実だ。
そんな中で、派手なプロレス技が出たら、真剣勝負幻想に浸っていた当時のプロレスファンは欺けても、ボクシング記者を納得させられない。かといって、エキシビションだということで来日したはずが、いわゆるケンカ試合をやってしまったら両国の英雄に傷がつくだけ。そんなことは絶対にさせられない。約束違反になってしまう。ではどうすればいいのか? かろうじて決めることができたのが、判定による引き分けという結末。
アリはグローブの種類で意志表示しながら、最後まで本気では殴らなかった。猪木も、とどめを刺すほどの技は放っていない。かと言って、リハーサルがないことで「いつ相手が“裏切る”かもわからない」という緊張感が生まれる。
“真剣勝負”ではないが“真剣”に戦わざるを得ない。状況証拠からすると、そうだった可能性が高い。これはタナカ氏の論旨でもある。そこで出てきた少なくともボクシング記者などを黙らせる妥協案が、猪木が寝て闘うことで致命的なパンチを避けるが、一方でローキックは打つというもの。これは井上譲二記者が『マット界舞台裏2月12日号』で「試合の2カ月前からアリキックの練習をしていた」と記していることからも伺える。
アリが騙し討ちだととらえたのは、「打ち合わせができなかった」ことを言っているのではないだろうか。アリなりに面白い試合をしようとしたのに、できなかったことへの怒り。だけれども、それは“お互いが勝ちにいく真剣勝負に変わった”ことを意味するわけではないというタナカ氏の結論に同意せざるを得ないのだ。
打ち合わせできなかったことがある意味で福と転じ、リアルファイトの錯覚を起こさせてしまうという“格闘ロマンの金字塔”に化けてしまったというのが、本来の種明かしなのではなかろうか。
『Gスピリッツvol.12』では、ルールの検討過程に関するあらゆる報道を追っている。しかしながら、これはどこまで行っても、「どう報道されたか」の検証にしかならない。
これは新間氏がルールの存在を否定していることからわかる。だけれども、そこを疑ってかかる読者には、テレビ調印式ディナーパーティーでの、猪木の「アリはあれだけ大口を叩いておきながら、裏では“ドロップキックは使わないでくれ”“空手チョップはやめてくれ”と、汚い手を使って要求してくる」というセリフはどうだろう。一瞬で相手を倒すパンチの応酬で生活しているアリサイドがそんなことを言い出すわけがない。真に受けるファンは、あまりにプロレスに染まり過ぎている。
ルールは検討しなかったが、どう試合を展開させるか、どういう結末にするかはアリサイドと新間氏は議論したはずだ。逆に「公開練習で使ったようなショルダースルーやジャンピングハイキックは使わないでくれ。ボクシング記者に八百長視される(さらには、20万円のリングサイド席から「金返せ!」と言われる)から」くらいの話が出たんじゃないのか。これを逆手にとって、相手のせいにして、猪木や新間氏はルール問題としてでっち上げたんじゃなかろうか。
元ネタがあるからこそ、猪木や新間氏の“がんじがらめルール”説明には熱が入ったものにみえる。これが“がんじがらめのルール”シナリオのルーツなのではないだろうか!
ただ、どう報道されたかの項は、テレビ朝日での50周年番組で伝えられたような単純な話ではまったくなく、入り組んだ展開であることが『Gスピリッツvol.12』には記されているので、あなたもぜひ謎解きにチャレンジしてもらいたい。
詳細は『Gスピリッツvol.12』を読んで欲しいが、かつて新間氏が“大塚がジャッジペーパーの改ざんをして引き分けにしたのではないか”という見解を出していたことに対して、大塚氏が詳細に否定している。
これなども「ほら、結末が決まってたわけじゃなかった」と受け取る人もいるだろうし、「詳述すればするほど、疑ってかかるべきだ」と考える人もいるだろう。ひとついえるのは、大塚氏も猪木同様に真相を墓場まで持っていく人物だということ。
まだ総合格闘技という概念がまったくなかった時代の猪木-アリ戦。採点基準が存在しようがないし、手数でいえば猪木につけるしかない中で、ジャッジは主審ラーベルが引き分け、プロレス側副審・遠藤がアリの勝ち、ボクシング側副審が猪木の勝ちにつけた。この不可解さを、タナカ氏は「ヒールの遠藤を、ここでも悪役にするというシナリオだった」と解いている。
それを頭に入れつつ『Gスピリッツvol.12』を読み進めると、猪木-アリ戦後に新日本のレスラーズが遠藤に制裁を加えようとしたエピソードがいくつも出てくる。これはレスラーズさえも騙されたのかな、なんて味わっていると、次のシリーズの開幕戦でレスラーたちが新間さんに「絶対そんなことやめてくれ!」って凄く怒られたというエピソードをドン荒川が明かす。新間氏はどのような真意で怒ったんだろうか。
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読者の方にも、ぜひ真実を見抜くことに挑戦してほしい。当サイトでは繰り返しになるが、猪木VSアリを考えることはプロレスを考えることである。
と同時に、知的ゲームへと誘(いざな)った猪木の功績は計り知れないことも強調しておきたい。
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・ カクトウログ: 猪木×アリ戦を考えることはプロレスを考えること~『徹底検証!猪木vs.アリ戦の“裏”』発刊
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■□T.SAKAi
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