金沢克彦著『元・新日本プロレス』レビュー~いつも心にストロングスタイルを/早くも重版が決定!
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金沢克彦著『元・新日本プロレス』を読了した。
▼new! 元・新日本プロレス
9月18日発売!詳しくは[コチラ]日本の格闘技文化の源流、新日本プロレスにかつて所属した選手たちを、元『週刊ゴング』編集長・金沢克彦が訪ねて歩く旅。 新日本に所属した体験は、その後彼らの人生にどう反映されたのか
・ 元・新日本プロレス 「人生のリング」を追って(宝島社)金沢克彦著 9月18日発売: カクトウログ
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『元・新日本プロレス 「人生のリング」を追って』金沢克彦
宝島社 9月18日発売 定価=1、500円(税込)
日本の格闘技文化の源流、新日本プロレス。巨大なエネルギーで戦後大衆文化を引っ張ったマット界の盟主にかつて所属した選手たちを、元『週刊ゴング』編集長が訪ねて歩く旅。新日本に所属した体験は、その後彼らの人生にどう反映されたのか。SWSに移籍し、試合中の事故で車椅子生活を余儀なくされた片山明との19年ぶりの再会。馬場と猪木の両雄に仕えた越中詩郎。新日本で道場最強と恐れられた小原道由。橋本真也の骨を拾い、その遺志を継ぐ大谷晋二郎。異端児の哲学を体現する栗栖正伸ほか。彼らが初めて明かす「新日本」と「それから」。
(内容紹介)
第1章 小原道由 「最強伝説」の真実
橋本―小川戦に乱入した理由/柔道時代から熟知する小川、吉田の本当の強さ/練習でジョシュ、藤田にも負けたことはない/悲運の交通事故からサラリーマン生活へ
第2章 片山明&大矢剛功 「不死鳥」が語った空白の18年
悲劇のヒーローなど御免です/初めて自分の目で観たトぺ自爆の映像/家族、友人、レスラーに支えられた18年/復帰を目指してリハビリ……楽をしたら自分じゃない
第3章 栗栖正伸 「イス大王」のプライド
山本小鉄さんへの憎しみと感謝/付人兼運転手から見たアントニオ猪木の実像/全日本解雇、引退に悔し泣き/闘いを見せてください……あの日、大仁田はそう言った
第4章 越中詩郎 馬場、猪木、そして三沢――
馬場さんは最後まで背中を向けたままだった/UWFの生贄となった真相/高田延彦だけに感じるオ―ラ/長州力との不思議な信頼関係/三沢光晴に41戦目の初黒星
第5章 大谷晋二郎 橋本真也を追いかけて
長州力との確執、そして和解/イギリス遠征中に急死したヨコヅナ/橋本真也は俺が守る/破壊王との別れ、棺を担げなかった屈辱/永田の高級マンションと大谷のアパート
無論、すっかりすたれつつあるジャンル、暴露本の類ではない。昨年7月発売の『子殺し 猪木と新日本プロレスの10年戦争』(宝島社)と同様にドキュメントであり、ノンフィクションと思ってもらいたい。ただ、手法はまったく違う。『子殺し』は過去に取材しながら、『週刊ゴング』誌上で掲載することのなかった事実関係を改めて、ドキュメントで追跡する形式。1990年台後半~2000年台前半にかけて、新日本のオーナーであるアントニオ猪木と、新日本の選手たち、長州力現場監督の間に生まれた確執や葛藤をリング内外で起こった当時の事件を検証しながら描いてみた。
今回の『元・新日本――』は、選手の生の声を伝えるノンフィクションである。1972年3月6日の旗揚げ戦(東京・大田区体育館)からじつに創立39年目を迎えている新日本。その長く深く重い歴史のなかから、新日本を退団していった選手数名に、「新日本プロレスとは何であったのか?」を問い掛け、そのレスラーの生き様に迫ろうというもの。現役の新日本所属選手ではなく、新日本で育ち、訳あって新日本を離れた人間に語ってもらうから価値があるのだと思う。いまだからこそ冷静な目で、当時新日本のなかにいた自分を見つめ直すことができる。また、新日本という団体の偉大さ、新日本に籍を置いていた誇り、そして、その後も含めたプロレスラー人生まで語れると思うのだ。
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金沢氏ならではの、取材対象者からの絶大な信頼による取材の深さに圧倒される。金沢氏がレスラーたちとぶつかり合い、取材という名の“攻め”を仕掛けているからこそ、描写のレベルが半端じゃない。数々の事件の真相がわかるのはもちろんだが、そこに至るレスラーたちのこだわりや葛藤、とんでもない苦労が伝わってきた。斜め読みができない。読むのに時間がかかってしまった。いい意味で。
レスラー本人が「これは書かないで」と希望したことも、なぜここに書くかを断って明かされた、みたいな個所もある。発売されてもなお、まるで取材対象との闘いが進行しているような感覚に陥る。ここに登場しているほとんどのレスラーをボクは掘り下げたことがなかったが、相当に素晴らしいプロレスラーたちであることがわかった。
金沢氏は、これが暴露本ではないという。ただ、明かされている情報のレア性という意味では暴露本に匹敵する。なんていうのかな、飲み会で「知ってる? ○○の真相って××だってよ」って喋るような話はないという点で、暴露本とは違う、となるんだろう。
プロレスを「伝える」というのはこういうことなんじゃないかと思う。
プロレス界の情報をネットや携帯で取得できるようになった。ツイッター上の短い言葉によって、コミュニケーションが図られるようにもなった。言葉が消費されていく一方で、もうひとつ増幅されていない。そこそこ早いタイミングで何かをバシッと言いきったら、なんだかそれが正解であるような空気ができあがる。ものすごく早く答えを求めてしまっているともいえるんじゃないか。
こんな時代だからこそ、自ら言葉を持つレスラーたれ!という風潮もある。だけれども、それだけでは、団体・プロレスラー・マスコミが一体となってレスラーの実態を表現してファンに伝えてきた「昔」には追いつけない。マスコミも、複数誌があったときには、それぞれが主義主張を持ってレスラーと二人三脚でムーブメントを作ってきたわけだ。
海外修業中の大谷晋二郎には、金沢氏からの日本情報が届く。新日本に残るか、橋本真也についていくか。金沢氏は両団体の情報をあえて客観的に伝え、あくまでも大谷自身が進路を決断するように持っていったという。最終的に橋本についていくことを選択した大谷に対して、まるで覚悟の度合いを測るように、金沢氏は“反対”してみせる。
「元・新日本プロレス」とは、「金沢さんが関わっていたころの新日本プロレス」と言い換えられるかのようだ。
では、プロレス界はどうやっていけばいいのか?
金沢氏はハッキリとは書いていないが、ボクには「オレがやらなくてもいいが、オレのようにやる覚悟のある人間はいないのか?」と書いているように感じる。この本は、週刊プロレスをはじめとする全てのプロレス者に対しての挑戦状となっている。いや、昔と違うから、プロレスと付き合うことはもちろんしんどいことだ。だけれども、全力を尽くしているのか、頭を使っているかという問いかけだろう。
この本には書かれていないが、金沢氏は試合解説の際にも、その選手の節目となる過去の出来事を「あの試合のときも○○だった」「あのときに△△と言い切った」というぐあいに挿入して、意味合いを視聴者に明確に伝えようとする。そういうレベルに解説をもっていけてるのは、少なくともメジャー団体解説者では金沢氏だけだ。
ロジカルにいえば、多団体時代が到来した上に格闘技界も存在してしまったから、人材難だ。一定以上のレベルのレスラーだけでスリム化してプロレス界を再編成するべきだと言えば簡単だろうが、なかなか現実的ではない。そんな中で、誰かを締め出すんではなく、ホンモノである新日本プロレス(あるいは新日本プロレス系)の価値表現をきっちりやり切る方向にもっていく。そういう作業をあなたは命懸けでやってますか? この本は、それを問うている。
一方の団体サイド。新日本プロレスサイドは各メディアを開拓&フル活用し、ノアに大差をつけてリードした感がある。必死でやらない限り、ファン・マスコミとの協調路線をとらない限り、浮上することはない。ピシャリと遮断しているような印象のノアに本当に不安を感じる。“入らない”のか“入らせない”のかはわからないが、最近のノア会場に金沢氏は入ってないんじゃないか。『Kamipro.Move』の連載コラムを見ても、ノアのビッグマッチリポートだけは皆無に等しい。たとえ変態團に行くことはあっても。団体サイドも、もっていきかたを誤ると、大変なことになる。
さて、関係者によると、この『元・新日本プロレス』は発売2週間で重版が決定! 昨年の金沢氏の『子殺し』を超える勢いのヒット作となっている。ぜひご一読をされたし。
ヒット作となる理由を自分なりに考えると、やっぱりみんな、熱かったころの新日本プロレスが好きなんだと思う。と同時に、「ノリを楽しむ」だとか「空気を読む」とかに流れるんじゃなく、「プロレス界と一緒に闘う」ような楽しみ方に戻りたいんだと思う。いつも心にストロングスタイルを。きっと、そういうことなんである。
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