安田忠夫ブラジル行きドタキャン騒動の“続き”~田崎氏と金沢氏が連絡を取り合ってわかったこと
元力士であり「借金王」とも称されるプロレスラー・安田忠夫。「引退して、ブラジルで相撲を教える」という触れ込みで2月4日に引退興行をおこない、後楽園ホールを満員にした。ところが、ブラジル行き当日(2月28日)の空港に安田が現れず、主催者やファンを裏切ったことが大きな話題となった。
経緯は過去記事をご参照ください。
・ 2011.03.01 ブラジル出発日、安田忠夫は空港に姿を現さず~田崎氏「皆さんの努力が水の泡になってしまった」: カクトウログ
・ 2011.03.01 安田忠夫ブラジル行きドタキャンをプロ格DX以外は黙殺~金沢克彦氏「単なる内輪もめですよ」: カクトウログ
・ 2011.03.03 安田忠夫はカンボジアの国際的カジノ企業に就職~引退興行実行委員会はブログ報告文を修正: カクトウログ
この話の“続き”について本稿では記したい。
“実行委員会によるブログ報告文修正”がおこなわれたあと、引退興行実行委員会の田崎健太氏は金沢克彦氏にメールを打っている(詳細は後述)。田崎氏によると「こちら(ブラジル現地)のみなさんと酒を飲んで、事の経緯について納得してもらいました」とのこと。関わった関係者・ファンの心情には複雑なものがある中で、現地で大きなトラブルにならなかったのは、せめてもの救いだと言えよう。
その過程で、田崎氏が最近の雑誌『Number』で記した安田の記事について「これを読んだら、引き受ける気はなくなるぞ」などとの意見ももらう局面もあったという。金沢氏に対してのメールでは、「悪魔の安田さんを見ましたが、その前の優しい安田さんは未だに好きです。ただ、人を巻き込んでしまった以上、責任者として戦わなければならない部分がありました」などと田崎氏は記した。同時に、「何度も(安田と)怒鳴り合いの喧嘩もしました」という本気度や、計画されていたドキュメント映画制作(安田を主人公にしたもの)への熱意も改めて明らかになった。
田崎氏は「本当ならば、早い段階で金沢さんに相談すべきだった」と戻せない時間を後悔。これには金沢氏も「田崎さんと私がもっとコミュニケーションをとって、安田のことをうまくコントロールしていたら、もしかしたら…という痛恨の思いも沸いてきました」と振り返っている。
最終的には、カンボジアのカジノの仕事を安田は選択した。「すべてを無にしてしまったのは、安田忠夫自身」(金沢氏)であり、安田の裏切りはおのずと批判されるべきものであることは確か。ただ、ブラジルで相撲を教えてどう生計が立てられるかを実行委員会も示しきれなかったし、安田も生活していく上での決断をせざるを得なかったという面もある。以前から明らかにされているように、ブラジルへの出発予定日の1週間前にはブラジルに行く気満々だった安田。このあたりの安田のギリギリでの決断があったことは間違いない。
ここまでが、安田忠夫、ブラジル行きキャンセルの顛末である。
安田ドタキャン後、いくつかの情報が流れたり、ネットに意見が書き込まれたりした。それは、安田本人・田崎氏(引退興行実行委員会)・金沢氏がそれぞれの立場で熱意を持ってやったことながら、それぞれに突っ走った点や行き違いもあった。いまはお互いの意志を確認できているし、安田本人には関係者に謝るという宿題は残っている、ところだとボクは思っている。(年に数回連絡をくださる金沢氏には申し訳ないが、読み手に大雑把なカタチで出してしまった文章も少しあったと思います)
安田騒動情報をカクトウログ上で扱ったボクとしては、反省させられることが多かった。必要以上に、安田を肯定するか否定するか、というような打ち出し方をしてしまったのだ。少なくない読者や関係者に不快な思いをさせたと思う。
と同時に、田崎氏らの熱意なくして興行の成功はなかったことは長く称え続けたいと思ったし、どの媒体よりも裏を取って情報を提供しようとする金沢氏の揺るがないスタンスも再認識させられた。
すべてがわかったとき、事実は大きく違いました。したがって、記事すべてに目を通していただければ、それぞれの立場の熱意や意志、こだわりがみなさんの心の中に浮かび上がるようにしたつもりです。
では、以下、金沢氏による振り返り(田崎氏のメールを紹介するようになった経緯含む)と、田崎氏のメールをご覧ください。いろいろごめんなさい。そして、ありがとうございました。
(ここまでカクトウログ管理人)
* * *
まず、簡単に今回の私と実行委員会の関わりを記しておきます。
実行委員会の長南武さんとは今回の引退興行関連の仕事で、安田のサムライTV「Sアリーナ」出演、それと大会当日の二度お会いして、挨拶、雑談などを交わしています。実に温厚な好人物です。
長南さんの奥さんもテレビ関係の仕事をしており、夫妻で300枚ぐらいチケットを売ってくれたといいます。
長南さんはテレビ・ディレクターで「情熱大陸」などを手掛けています。
残念ながら、代表の田崎健太さんとは大会当日も挨拶を交わすことができませんでした。私はテレビ解説の準備、他のサムライ番組用の収録などもありバタバタしており、もちろん主催者の田崎さんは終始走り回っていたので、最後まですれ違いで終わってしまったのです。
ただ、大会終了後の深夜、安田の携帯から電話があり、「田崎さんが、金沢さんに会えなかったから御礼だけでもいいたい!」と。
そこで電話を代わり、2~3分話しました。
「本当にいろいろと協力いただきありがとうございました!」
「いえ、安田のためにこんな素晴らしい興行をやってもらって、私も感謝しています。正直言って、業界素人の方がこんな凄い興行をやってのけたこと自体、奇跡的ですよ」
「金沢さんにそこまで言っていただけたら嬉しいです。今後もぜひよろしくお願いします」
この程度の会話でした。それ以降は、田崎さんとは話していません。
むろん、なにかのフラストレーションが溜まり始めた安田からは、22日ごろから異常なほど携帯電話に頻繁な着信があり、メールもたびたびきました。
「頼むから愚痴を聞いてくれ!」というようなメールなので、しばらく放っておきました。
彼は昔からそうなので(笑)。そういう場合はまだ大丈夫なんです。
それに、21日には「28日にブラジルへ行ってきます!!」というメールがちゃんと入っていたからです。
どうせ、ちょっと田崎さんと口喧嘩したとか、そういうレベルの話だと思っていたのです。
ところが、その後随分とゴタゴタしたようです。
あまりに頻繁に着信があるので出ると、安田は「ぜんぜん金がない、飯も食えない! もらった10万なんかパチンコで使ってやったよ!」とやけになるようなことを言い始めました。
さらに、「金の明細がどうなっているか、どれぐらい儲かったかも分からない」と言うので、「それはちゃんと聞けばいい。キミが主役の興行なんだから、収支の明細は教えてもらう権利がある。ただし、威圧的に物事を言ったら相手は気分を害するから、普通に話すように」とアドバイスしました。
しかし、どうもその後も揉めたようです。
26日には「もうブラジルには行かないということで分かってもらった」というような内容のメールがあり、翌27日には「向こうは空港で待つと。もしアナタが来ないのであれば、浮いたお金は寄付します。そう言われた」と憤慨しているようなメールが来ています。
田崎さんはもうひとあし先に日本を出ているために、長南さんが連絡係をしていたようです。
安田は温厚な長南さんを親っていたし、長南さんは「夫婦そろって安田さんの大ファンなんです!」と言っていたのに、なにか話が違ってきている。雲行きがおかしい。
結局、安田は「もういい。俺はカンボジアに行くよ! ちょうど1日からカジノの研修生たちが現地に向かうから、俺も一緒に行くことに決めた」と。
「関係の修復は不可能なの?」と確認すると、「もう田崎さんと一緒に行動するのは嫌だ。あの人とはやっていきたくない」と。
こうなると、もう安田を説得するのは無理だし、28日に実行委員会からマスコミ向けに文書が送付されて、ジ・エンドです。
それ以前に「今回の一件は互いに会見などで公にしない」という約束を一応交わしたとの話も安田から聞いていますが、これは安田と長南さんとの間の話だったようで、田崎さんは「それではいけない!」という結論を出したようです。
安田にしてみれば「約束を破った」となるし、AYAMIさんも「話が違うし、なぜあそこまで書くのか? ぜんぶパパが悪者みたいで許せないです」と。
その気持ちを受けて、私は安田に、もし文書のなかで事実とは違う部分があるなら、それをオレが代わりに指摘してやるからと約束しました。
そして、3月1日の夕方、京成ライナーで成田空港へ向かう途中の安田から電話が入りました。安田の指摘を受けて、私が「こういうことでいいか」と文章にしたものを読み上げると、突然安田は号泣し始めたのです。
「ありがとう!ホントにありがとう! 迷惑ばっかりかけて……」
電車のなかで、AYAMIちゃんの隣席で、安田が大泣きしているのです。
安田が号泣するなんて、本当にあのバンナ戦で勝利をあげ引き揚げてくるとき以来でしょう。
こいつも苦しんだし、開き直ったふりをして苦汁の決断だったのだなあと思いました。
その内容は「カクトウログ」に掲載された通りで、それに実行委員会サイドもすぐに反応してくれたし、HP上の謝罪文を修正するなど適切な措置をとっています。
そして、下記のような突然の田崎さんからのメール。
-----Original Message-----
From: KentaTazaki
Sent: Thursday, March 03, 2011 10:48 PM
To: katsuhiko kanazawa
Subject: バイア州の田舎町より
金沢さま
お疲れ様です。田崎です。今回のことでは本当にご迷惑をお掛けしました。本当ならば、早い段階で金沢さんに相談すべきだったと今、反省しています。
ブラジル行きについてもかなり綱渡りの状況で、本当に周りが見えませんでした。
ぼく自身、こんなに騒ぎが大きくなるとは思っていませんでした。
昨日、安田さんの受け入れ予定だった、バイア州のポスト・ダ・マッタという田舎町に来ています。未だにブラジルの日系人の方は、力士に対して憧れがあるようで、安田さんが来ないことを言うとかなりがっかりしていました。今日、知り合いの家に行くと、大相撲協会のカレンダーが飾ってあり、番付を日本から取り寄せているというおばあさんがいました。安田さんに会えることをすごく楽しみにしていたと聞くと、やはり一緒に来たかったなという思いがあります。とりあえず、安田さんの代わりと言ってはなんですが、しばらくここに数日滞在して、土俵を作る予定だった場所等を見てきます。(ブラジルの携帯は圏外になり、ネットも街で一軒のネットカフェに行かないと繋がらないという状況に困っていますが)
今回のことで、悪魔の安田さんを見ましたが、その前の優しい安田さんは未だに好きです。ただ、人を巻き込んでしまった以上、責任者として戦わなければならない部分がありました。そのことだけ金沢さんにご理解頂ければ、ぼくとしては嬉しいです。
金沢さんさえ良ければ、一度時間のある時に、改めて挨拶させてください。
それでは、また。
本来、安田がいるべき場所に、土俵を作る予定だった場所にいる田崎さんの心境を思うと、なんとも言えず胸が痛くなりました。
「この人は本気だったんだ!」という思いが改めて強くなってきたし、田崎さんの指摘通り、田崎さんと私がもっとコミュニケーションをとって、安田のことをうまくコントロールしていたら、もしかしたら……という痛恨の思いも沸いてきました。
それと同時に、このメールをもって騒動に終止符、終結させたいと。
ファンはともかく、マスコミ関係者までが取材もすることもなく、文書に目を通しただけで批判・誹謗の言葉を次々と書き込んでいる。
あなたたちは、安田のなにを知っているのか? 田崎さんのなにを分かっているのか? 長南さんの痛恨の思いを知っているのか?
とくに、長南さんは何度もメールで「自分に力が足りないから、安田さんの我がままに負けてしまった。あんなに安田さんのことが大好きだったのに」と自分を責めています。
プロレスマスコミがマスコミではなくなっていく様を目の当たりにして、このメールを読んでいただこうと。
いや、もうマスコミは関係なく、ファンに届けばそれでいいかなと思います。
カクトウログから火が点いた騒動はカクトウログで収束させましょう。
どうしようもなくその思いが強くなり、田崎さんへの返信メールに「メールの全文をカクトウログに掲載させてもらっていいでしょうか?」という提案を付け加えてみました。
-----Original Message-----
From: KentaTazaki
Sent: Friday, March 04, 2011 10:49 PM
To: katsuhiko kanazawa
Subject: バイア州の田舎町より
金沢さま
お疲れ様です。泊まっている家ではネットが繋がらないので、インターネットカフェまでパソコンを持ってきて、繋がなければならないため、連絡が遅れて申し訳ありません。
メールの転用については問題ありません。このメールを含めて、使用については金沢さんに一任します。
今回、プロレスと関わってみて、非常に特殊な世界だというのが良くわかりました。その中で、金沢さんが踏ん張っているのは、本当に心の助けになりました。安田さんが金沢さんのことを悪く言わない理由も良くわかりました。
昨日は、こちらでお世話になる予定だった方に連れられて、果樹園やユーカリの植林されている場所に行ってきました。一人の方は、「俺は今、セミリタイアで時間もあるし、安田さんが来るならば一緒に色んなところに連れて行こうと思っていたんだけれどな」、また別の方はナンバーのぼくの原稿を読んで、「これを読んだら、引き受ける気はなくなるぞ」と冗談まじりに言われました。ただ、ぼくが「こんな風に書いても、実際に会うと、すごく可愛い、いい人なんですよ。ギャンブルしなければ本当にいい人です」ととりなすと、逆に「そんないい人をこんなに悪く書いたら駄目だろ~。ここに来てれば、ギャンブルないから大丈夫だったのに」と笑い飛ばされました。
とりあえず、昨晩、こちらのみなさんと酒を飲んで、事の経緯について納得してもらいました。安田さんのような日本から収まらない人には、様々な人がいるブラジルが合ったのになぁ、なんて改めて思います。
先日のメールに、一つ付け加えるとすれば、
ドキュメント映画作製については、こちらも赤字覚悟です。というのも、テレビ局は、安田さんのようなキャラクターが主人公だと、スポンサーがつかないため、番組になりません。ぼくと長南は、安田さんという奇特なキャラクターをもっと知って欲しい、その可能な手段が自分たちで製作費を出して、ドキュメント(映画)を作ることでした。シネコン全盛の今、そうしたインデペンデントの映画を掛けてくれる映画館は限られています。なので、こちらも実現した場合、赤字になる可能性が大です。それでもどうしてやるか、というと、安田さんのような桁外れの人間を目の前にして、この姿を伝えてみたいという表現者の性でしょうか。
とにかく、何度も怒鳴り合いの喧嘩もしましたが、不思議な魅力のある人でした。
あの興行には、普段プロレスに来ないような方にチケットを買って貰いました。学生たちが見られるようにと、奨学生シートという形で、試合に来ないのにお金を出してもらった方も多数いらっしゃいます。主催者として、そうした方々への説明責任がありました。安田さんを糾弾するつもりではなかったことだけは、プロレス関係者の方々にも少しでも分かって頂ければ幸いです。
一日一回程度しか、ネットに繋げないので、連絡が遅れるかもしれませんが、きちんと対応しますので、何かありましたら、また連絡ください。宜しくお願いします。
私もネットでは完全にヒールですね(笑)。
一部マスコミ関係者も私を批判しているようです。
金沢はただ盲目に安田を庇う、世間の常識を知らないプロレス村の住人だということらしいです(笑)。
どう言われようと、気にもしません。こんなものゴング時代に受けたバッシングと比較したら屁でもない。
それに、この田崎さんのメールの内容で自分の立場をベビーフェースに変えようとも思っていない。
だいたい安田の我がままを聞いて、引退興行に協力した時点で大きなリスクを抱えていたわけですから。
お金には代えられない、信用という重大なものを懸けて協力したので。
こんな大きなリスクはないと思っていますから。
安田の我がままを聞いて、彼に協力するのはこれが最後と決めていたので。
改めて、田崎さんの覚悟が伝わってきます。
本気だったから何度も安田と口論もしたのでしょう。
すべてを無にしてしまったのは、安田忠夫自身です。
かといって、彼は犯罪者ではありません。
彼も生きて行く上で、選択をしたのです。
最初からカンボジアに行くつもりだったわけではなく、途中で心変わりしたのです。
こうなってしまった以上、安田も自分が選んだ道でがんばって成功してほしい。
これから時間がたって、気持ちに余裕ができれば、
田崎さん、長南さんたちに会って、まず頭を下げてほしい。
きっと田崎さん、長南さんも許すどころか、「安田さん、僕らにも非があったんだから」と言ってくれるはずです。
ああ、やっぱり安田忠夫と関わると、とんでもない事態が待っていたなあと(笑)。
あとは、AYAMIちゃん、しっかり親父の支えになってやってください。
困ったとき、腹立たしいことがあったとき、親父が日本にいないときはちゃんと金沢が聞くから。
いつでも電話してきて構わないからね。
※3/9追加情報
田崎健太氏自身が当記事を紹介しています。
・ Twitter / @KentaTazaki: 安田さんとの引退興行でお世話になった金沢さんとのメー ...
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安田さんとの引退興行でお世話になった金沢さんとのメールのやり取りが公開されています。偽りのないぼくの気持ちです。
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田崎氏を知る「いしかわじゅん」氏が安田忠夫についてのコラムを書いています。
・ 14.あるレスラーの人生:日経ビジネスオンライン
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=関連リンク=
・ 安田忠夫引退興行実行委員会のブログ
・ Son-God-Cool (SonGodCool) on Twitter
・ KentaTazaki (tazakikenta) on Twitter
・ 安田忠夫 - Wikipedia
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