前田日明、ボブ・マーリーのラストライブを見ていた~2・5新宿トークショーまとめ【週刊 前田日明】
前田日明が足りない世の中に、とことん前田日明を発信してみる。毎週日曜日は、前田日明関連の動きをできる限りカクトウログが追う「週刊 前田日明」の日です。連載第126回のラインナップ▼前田日明、ボブ・マーリーのラストライブを見ていた~2・5新宿トークショーまとめ・・・[記事全文へ]
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不定期連載となっていることをご了承ください。今年初更新。
情報をキャッチしていながら、最新1週間(月曜から土曜まで)で取り上げなかった前田日明の話題、あれば翌週送りせず日曜にまとめる。あと、1週間で取り上げた前田関連記事、主要記事リンクも再集約しておくことにします。
(週刊前田日明バックナンバー →「週刊前田日明」参照)
この連載を毎週見ておけば前田関連の動きは逃さない!
理想はそこですが、どうなるか。
▼▼▼ W E E K L Y A K I R A ▼▼▼
会場入りする前田日明。ファンにサインを求められる。
5日19:00より前田日明デビュー35周年記念DVD-BOX発売を記念したトークイベントが新宿ロフトプラスワンにて行われ、約100人の前田ファンで賑わった。
このトークショーで前田は、イギリス遠征時代、ボブ・マーリーのラストライブに足を運んだことを口にする。
・ ボブ・マーリー - Wikipedia
前田「(イギリス遠征時代のプロレス会場の話の続きで)ウェンブレーと言えば、ボブ・マーリーのラストコンサート、おそらく観に行ってるんですよ、オレ。そのときジャマイカ出身のやつに誘われて。ジャマイカの英雄で歴史に名を残してナンチャラカンチャラって。
ボブ・マーリーが脳腫瘍なのにドレッドヘアーを切るのを拒否して死ぬかもしれないという流れでラストコンサートで。観に行ったら変なオッサンだけど唄はいいなぁと思ってて、日本で帰国してから聞いたとき、そうか、あのときのアーティストだなぁと思ってね」
司会の流智美氏によって他の話題に切り替わり、これ以上のこの話題の展開はなかった。
すこし脱線するが、ボクはこのトークショーの3日後、音楽に詳しめの元後輩社員と飲む機会があり、こんな会話をする(酔っていたので事実間違いなどあったらご勘弁を)。
カクトウログ管理人「前田日明のトークショーに行ったとき、前田がボブ・マーリーのラストコンサートに行ったって話をしてた。ボブ・マーリーってどんな人なの?」
後輩「世界中のアーティストにもっとも影響を与えた人でしょうね。ジャマイカという(世界の中では)田舎で自分たちの音楽として楽しんでいたレゲエを世界に広めた。自分たちでレゲエを楽しむだけで幸せな時代だったのに、それを広めたのがボブ・マーリー。楽しむだけでいいじゃないか、ともまわりに言われたんだけれども広めなきゃ意味がないと彼は考えて、実際に行動した」
カクトウログ管理人「そういうのって、あとあと何とでも批評されるよね。前田だって意志を持って総合格闘技という業界をつくっていったとも言われるし、いやアントニオ猪木によるアメリカンプロレス的なやり口に対抗するには関節技主体のプロレスをやるしかなかったともされるし」
後輩「あとあと何とでも論評されるんですよ。ボブ・マーリーも全く同じで、もちろん金儲けをしたかっただけと言われることもある。ただ、多くの人が躊躇する局面で、あえて闘った人ですね」
多くの人が躊躇する局面で、あえて闘うということ---!!
話をしていて、前田日明とボブ・マーリーは同じスタンスで時代をつくっていった人物なんじゃないかと思った。前田とボブ・マーリーの接点には、何か運命的なものさえ感じたのである。
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イベントの振り返りだが、写真・録音は禁止のため、メモを元に報告します。なので聞き間違いの可能性はあることは承知の上で読んでください。間違いの指摘をメールやツイッターでいただくことはもちろん歓迎。
司会・聞き手は流智美氏。発売記念イベントということで、実際に編集にも携わった流氏からDVDの概要が紹介される。DVDにはテレビ朝日に残っている前田日明の試合を“全部集めた”という62試合収録。36試合が初収録であり、30試合がノーカット収録、通して13時間にも及ぶという。
グレーのブレザーで登場した前田は「こんな試合やったっけ?って全然覚えてない。(写真)アルバムも持たない主義なんで、息子にDVDをみせてやろうと思います」と冒頭あいさつ。参加者と一緒に乾杯をした。
葉巻を取り出した前田は、いきなり下ネタと絡める。
前田「現役辞めてからは“ニコチン力”エンジンで動いてるんで。現役のときは吸ってたのはオッパイだけだったけど、今は葉巻とオッパイで」
流氏の司会によって、新日時代を時系列に沿って振り返った前田。同期の平田の話、寮長として門限を破った現ライガーにスクワット3,000回をさせた話、第1次UWFなどがつづく。
前田「(第1次UWFの)最初は大宮に猪木さんが来て、蔵前に藤波さんが来るという話だったんですけど、誰も来なかった」
流「前田さんの相手はダッチ・マンテルじゃなくて藤波(という構想)だったかもしれない?」
前田「そうだったかもしれないですね」
流「あのときはラッシャーさんもいましたけど、どんなコミュニケーションを?」
前田「木村さんはすごいビッグハートでね。『前田君は自分のやりたいことを一生懸命やればいい』って言ってくれて。あの人は養子を迎え入れててね。養子3人を東大に入れたんですよ」
前田「藤原さんはね、今の時代に20代ならUFCで上位定着してたでしょうね。でも使われるのは前座ばかりで、“雪の札幌(長州を襲撃)”はチャンスだと思ったと思いますよ」
前田「当時、藤原さんが機嫌悪いと、相手はボコボコ。あるとき小沢さん(キラー・カーン)が口喧嘩になって、小沢さんが『俺はマジソンでメイン、お前は前座』って言ってね。間の悪いことにその週のテレビマッチで対戦して、小沢さんはボコボコにされましたよ」
前田「なんで新日本は(当時)あんなグチャグチャの試合を認めるのか。本当にね、セメントなのかケンカなのかっていう、全日本プロレスなら全部クビになるようなことをしょっちゅうやっていた。なんでかなぁと思ったんだけど気づいてね。
山本さん、星野さんをはじめ当時の新日本の選手たちはテネシー州の遠征が多いんです。太平洋戦争の戦死者が一番多い。あそこに行く日本人は身の危険をいつも感じるんです。そんな中では現地の選手は日本人に技をかけられると観客に変に見られるから、プロレスにならない。だから、ガッと相手を押さえつけてプロレスにちゃんと持っていくという相応の技術が必要だった」
前田「当時のアメリカは人種差別やってる最中で、60年代、白人用のトイレがあった。そういう中で闘ってきた歴史がのちのちの新日本プロレスの気風になった。その気風があったから、そこからUWFもできたんです。新日本がなかったら、UWFもリングスもパンクラスもシュートもプライドもK-1も全部なかったんです」
前田「俺とやりたいっていう話が全日本プロレスの選手から聞かれたときもありましたけど、誰とやらされても何もさせない自信が当時ありましたね」
オールスター戦のバトルロイヤル出場。他団体選手が自分から逃げ回り、それを山本小鉄に試合中に怒られ、あっさり3カウントで自身が負けざるを得なかった話。
鈴木みのるとアポロ菅原の試合をユーチューブで見て「鈴木も根性ねえなという感じ」。
空手時代の“路上教習”の話。
そして、凱旋帰国第1戦、ポール・オンドーフ戦の話題に。
前田「オンドーフは元フットボーラーで、正直、受け身とか全然ダメ。ミスター高橋さん通じて『投げはやめてくれ』なんて言われてね。そしたらゴッチさんが代わりに控室に行って潰してきた(?)んですよね。試合は、自分はゴッチさんから『1~2分で潰せ』と言われ、新間さんからは『10~20分やってくれ』と言われ、けっきょくゴッチさんの言うことを聞くしかなかった」
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後半は質問コーナーに。開演前に回収された来場者アンケートの質問項目に答える。
(プロレスは今でも見る?)
前田「自分はけっこう夜更かしするんで、パッと観るときがあります。昨日も(「ワールドプロレスリング」)やってましたよね。決め事が多過ぎて動きが硬いんですよね。間違っちゃいかん、間違っちゃいかん、って(会場笑い)」
(本当に強かった選手は?)
前田「いろんな選手が強かったですけど、藤原さんは本当に強かったですね。プロレスラーのうんぬんでは『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』を読んでね、いい本だったんですけど、途中プロレスを何も知らないでかいとるなというのがあったんですけど、ちゃんと哲学を持って書いてる人がいるなっていうのは嬉しかったですね」
加えて、リングス時代の北沢レフェリーがヴォルク・ハンに何もさせず、ハンが驚いていた話。
(ディック・マードックの思い出はありますか?)
前田「根っからの明るいテキサン(テキサス州の男)でね。プロレスを半分遊びでノリでやってる面があって。場外乱闘が面倒なんだか、すぐにリング下から戻ろうとしたことがあった。お前ずるいだろうと思って引っ張ったらタイツがめくれて(マードックの)お尻が見えちゃってね。それ、恒例になりましたよ」
(UWF時代の選手と現在交流があるか?)
前田「藤原さんがたまに電話をくれますね。何年か前に山ちゃん(山崎一夫)の整体に行った。UWFってね、要するにバブルな時代でね、儲かるんだとみんな思っちゃって」
(フロントサイドの)神たちが株配分について口をつむり、黙ってメガネスーパーに売ろうとしていたフシから、「メガネスーパーからも誘われたけど、神のこともあって疑心暗鬼で行けなかったですね。オレは頑張った人が報われる世界をつくりたかったのに(UWF分裂は残念)」。
前田はここから、格闘技への取り組みについての熱弁を展開する。
前田「もともとPRIDEもDREAMも金儲け(しようとした人の手)でできた。芸能プロダクションの発想でバイオレンスなものをやっている。それがバレてグシャとなったけど、今も変わってないんですよ。自分はこの世界をまっとうな世界にしたい。選手は実力以上のおカネをもらってる」
前田「グラウンドが得意な選手にキックボクシングをやって、やれ判定で勝ちました、作戦勝ちですみたいな試合、アホかって。桜庭を見てよ。いい試合をしないとメシ食えないってしみこんでる(それがプロ)。負けた選手が出ても客が入るようにしたのは、UWF、リングス、パンクラス、その三つが頑張ったから。グラウンドの技術が認められるようにしたのもUWF、リングス、パンクラス」
前田「リングスの構想? HERO'Sからいろいろ見てきたんですけど、未払いのある選手で才能のある子も助けなきゃいけないし、少年院帰りのようなアウトサイダーの子が社会に入りにくいのも気になる。せめて格闘技だけは公正できる世界を、と思って始めた。今は(アウトサイダーから)プロになった選手も6人くらい出した。海外のネットワークも浮いてるので、きみたちが世界をつくるんだよと言ってある。前に(日本の)テレビを見てたら、リトアニアで有名な日本人で前田日明っていう番組があって、彼らに対しても責任がある」
前田「UFCが全盛だけど、怖いものがある。パウンドありとか危険なルールの試合の放映がされているのはブラジルならリオネジャネイロだけ。全国放送されてるのは日本だけ。子供が馬乗りパンチで死んで『総合格闘技ごっこで死んだ』と言われたらどうなることか。UFCでさえスポーツ化の動きがあるのに、日本はダメ。青木の腕折りシーンや桜庭が(取れそうになった)耳を押さえたシーンもそのまま放映してる。そりゃね、スポンサーつかないですよ。社会的な責任を背負わされているはずなのに、やってないわけです」
前田「プロっていうのは細心の注意を払ってヤバいことをやるもの。そのためにレフェリーがいてドクターがいて。壊れるものは壊れる。でも、壊すものを容認するのはダメ。話が違いますよ。それでパンチドランカーみたいな人がたくさん出る世界を応援する人がいたとしたら、オレは許さないですよ。引退しても女優さんと結婚しててとか、憧れる世界をつくらなきゃ。廃人を出す世界をつくっちゃいけない。現在の総合格闘技は選手の人生をオモチャにしている。まっとうなことをしたい!」
流「最後に、新日本プロレスについて振り返っていただきたいんですが」
前田「若いとき、いい人生経験を積んだところ。感じたこと、出会い、かけがえのないものがいっぱいあった。今当時を考えても多士済済(たしさいさい)で、どこにでも出れる人ばっかり。本当に自分の人生としてラッキーだった。その人たちのためにも、自分の生きているところ(格闘技界)をしっかりとしたものにして、後世にバトンタッチしたいと思ってます」
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トークショーの流れは前半は流氏がコントロールしていたが、後半は前田が独走。レゲエを聞いていたのに、レッドゾーンの向こうに振りきれんばかりのロックが聞こえてきたような…その振り幅は今回の報告記事でどれくらい感じていただけただろうか。メモが取れたところからの抜粋にせざるを得なかったことと、語気の強弱までは再現しようがなかった。
ただ、あの日、会場に足を運んだファン同士では、しっかりと前田の意志を受け止めた。
いま前田はリングス再興に向かって動いている。一時代を築いたわけであるから、ここにきてリスクのある闘いに出なくてもいいかもしれない。自身が現役の頃とは時代も変わってきている。それでもなお、“論評される側”に身を置こうとしている。
正直、リングス復興に対してのスクープ情報などがあれば聞き取りたいという意識もあってボクは足を運んだ。そういうものはほとんどなかったわけだけれども、これ以上ないくらいのライフワークとしての責任感ぶりをずっしりと感じた。
まわりはなんとでも言えるだろう。ただ、前田は自身が受け継いでいる、信じているものを、新日本プロレス時代からブレることなく将来へとつなごうとしている。恐ろしいほどに、トークショー全体が前田日明に溢れていたとボクはまとめたい。
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・ 週刊 前田日明 ~unofficial~
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