柴田流の昭和プロレスを受け止めた棚橋「本当は大好きなんですよ」~8・8横浜G1公式戦は名勝負に
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あの会場、あの日付。棚橋弘至がポッドキャスト番組で「これだと猪木さんが柴田さんで藤波さんが棚橋になるんでしょうね」とコメント。東スポでは伝説再現と煽られる中で、8日、G1クライマックス公式戦として棚橋弘至vs柴田勝頼が行われた。
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この両者なら30分フルタイムも想定されたが、21分20秒、棚橋が柴田を破る。
・ 第9試合|08-08(土) 18:30 神奈川・横浜文化体育館|バディファイトPresents G1 CLIMAX 25|大会結果一覧|Match Information|新日本プロレスリング
会場に足を運びました。
新日本リターン後、両者のシングルは4度目。位置づけが異なるので一概に比較はできないが、もっとも内容がよかった試合と言って差し支えない。柴田流の低空ドロップキックのお株を奪った、場外での棚橋の逆低空ドロップキック。柴田にも対角線串刺し式で起き上がろうとする棚橋にフェイントエルボーを放つなど、アレンジが見られた。進化した意地の張り合い。
それでいて、柴田が志向するグラウンド、絞め技、極め技の攻防がとことん繰り広げられた。コブラツイスト、卍固め、スリーパーホールド、リバースのインディアンデスロック、弓矢固め。新しい平成プロレスファンにはわかりにくいだろう。だけれども、館内がシバタコールに包まれ、緊張感とともに観客の興奮が高まっていく。最終的には棚橋が貫録をみせたが、引き揚げる柴田の背中に大きな声援が送られていた。
けっして他の試合うんぬんを言うつもりはないが、これはこれで一つの「本物のプロレスを観た」という空気が会場に充満していた。なかなか満員にならないG1横浜大会であるが、この日はギッシリ。期待に十分応えた内容だったのだ。
柴田が繰り出した卍固めは、一時期の“腕極め卍固め”ではなく正調“卍固め”。これはアントニオ猪木へのオマージュということだろう。往年の新日本プロレスの最高級の技であるから、これを出しての敗戦は悔しい。ただ、「8・8横浜文化体育館」が背中を押して出させたんだと思う。
アントニオ猪木、藤波辰爾、長州力らの全盛には、大一番が丸め込み技、押さえ込み技でフィニッシュすることも多々あった。攻防が拮抗しているからこそ、最後はそれでしか決着がつかないという結論に味わいがあるものだ。平成ファンにはどう映っただろうか? この試合は、日本のトラディショナルなプロレスへのいざないでもあった。
新日本プロレスワールドにて棚橋vs柴田戦を観た。最高!!
— 木谷高明 (@kidanit) 2015, 8月 8
試合後の柴田はノーコメント。棚橋は口を開く。
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棚橋「よし。難敵、柴田は『G1』に入って、どの選手とやっても凄い充実した内容を残してたから。そういう時の選手は恐いんですよね。ただ、その柴田を止めた。土俵際、強いでしょ。このギリギリの所で、ギリギリの所で踏ん張らせたら、俺は世界一だから。この調子で、土俵際に強いから。あと公式戦2試合、全力かけてやります」
――8.8横浜ということに関してはいかがでしょうか?
棚橋「なんかいろいろやってみようと。そういう風に見てくれたほうが、俺の縛りが無くなったというか。いつもの棚橋で行かなくて済んだという所はありますね。僕そういうの好きじゃないですか。あぁいう(グラウンドの攻防の)レスリング。本当はね、大好きなんですよ」
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単なる懐古ではなく、昭和テイストを現代プロレスに落とし込んで名勝負連発しているG1での柴田。しっかり受け止めた棚橋。
こういうトラディショナルなプロレスは、棚橋が“トライしてみたかったが捨てた”ことのひとつだろうと思われる。
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棚橋弘至「最初からオールドスクールのアメリカンプロレスをやりたかった。もっとぶっちゃけて言うと、当時の新日本において、レスラーとしていろいろやりたい技だったり、トライしてみたいことっていうのはたくさんあったけど、ぼくはそれを全部捨てたんです。自分のアイデンティティを捨てて、お客さんがわかりやすくてキャッチーでポップなプロレスに傾倒した、傾倒するしかなかったんですよ…。さいわいボクは柴田(勝頼)さんほど頑固じゃなかったし、自分のやりたいことにこだわってたらダメだなと」
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棚橋が志向した「お客さんがわかりやすくてキャッチーでポップなプロレス」。もちろん、そんなひとことで括られるほど棚橋のプロレスは安くないし、ベースにはプロレスの教科書がしっかりと息づいている。加えて、彼の喜怒哀楽はいつもボクらに滲み出ている。
それでいて、現代版の昭和プロレスを引っ下げて柴田が乗り込んできて、棚橋が「本当は大好き」なプロレスが“復活”する。
捨てながらも受け止めた棚橋。捨てられなかったがアレンジした柴田。プロレスを復活させるために棚橋・柴田が選んだプロレス。プロレスが大好きだからこそ、そこに後悔は一切ないだろう。これだから、プロレスはやめられない。
3年前の新日本プロレスリターン時の柴田の主張。
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柴田 いま、レスラーもファンもなかったかのようにしてる昭和のプロレスを、自分らがいまのプロレスに持ち込んでやりますよ。勝手に諦めてんじゃねえ、都合よく消し去ってるんじゃねえって!
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柴田のプロレス。後藤洋央紀との青春のぶつかり合いも、桜庭和志との緊張感ある攻防も魅力的だっだ。だけれども、昭和の雄「藤波」テイストをリスペクトする棚橋を相手にして光った8・8横浜のメイン。昭和プロレス持ち込み宣言の一つの完成形を見た感があった。
この試合は「ベストバウト」という言葉より、「名勝負」という響きが似合う。そう思うのだ。
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横浜大会終了後の星取表。
・ 8-8【新日本】『G1 CLIMAX 25』現在の得点状況…プロレス-格闘技DX(プロ格)はマット界の情報を完全網羅!
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【8/8現在】
◇Aブロック◇
[1]棚橋弘至 10点(5勝2敗)
[1]内藤哲也 10点(5勝2敗)
[1]AJスタイルズ 10点(5勝2敗)
[1]バッドラック・ファレ 10点(5勝2敗)
[5]真壁刀義 8点(4勝3敗)
[5]柴田勝頼 8点(4勝3敗)
---以下脱落---
[7]飯伏幸太 6点(3勝4敗)
[8]矢野通 4点(2勝5敗)
[9]天山広吉 2点(1勝6敗)
[9]ドク・ギャローズ 2点(1勝6敗)
◇Bブロック◇
[1]オカダ・カズチカ 10点(5勝1敗)
[2]後藤洋央紀 8点(4勝2敗)
[2]中邑真輔 8点(4勝2敗)
[2]石井智宏 8点(4勝2敗)
[2]マイケル・エルガン 8点(4勝2敗)
[2]カール・アンダーソン 8点(4勝2敗)
[7]小島聡 4点(2勝4敗)
[7]高橋裕二郎 4点(2勝4敗)
---以下脱落---
[9]永田裕志 2点(1勝5敗)
[10]本間朋晃 0点(6敗)
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残り対戦カードはこちらで。
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