なぜプロレスラーは技を受けるのか? テレ東『リトルトーキョーライフ』で質問された棚橋弘至、アントニオ猪木流「風車の理論」を持ち出す
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21日深夜のテレビ東京『リトルトーキョーライフ』に棚橋弘至が出演。スタジオにてプロレス技に対しての質問に回答した。
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「プロレス技って よけられる時 ありますよね?」
その答えはぶっちゃけ…かわせます! かわせますが、プロレスラーは“あえて”かわさない。なぜなら「受けの美学」。技を食らってもまだまだ立ち上がれるんだぞという男としての強さを競い合う競技。
「かわすのって恥ずかしいことなんですか?」
これ食らったらやばいなって時は逃げます。勝負所ってあるんですよ。
猪木さんも言ってたんですけど、「相手の力を9引き出して、自分の力を10出して勝つ」。そうすると試合としても盛り上がっていって、盛り上がったところで勝負が決まる。
レスラーたちが痛さに耐えて、立ち上がる気持ちを感じてほしい。
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なぜプロレスラーは技を受けるのか? この疑問にどう向き合うかで、プロレスファンになるかどうかが決まるくらいの大きな問い。
多くのレスラーでありファンが共有している価値観にそった回答を、棚橋はしたと言っていい。勝敗以上の強さを競い合う摩訶不思議なスポーツ。それがプロレスなんである。
プロレスラーがプロレスに毎日の大半を割くように、人生の大半を会社勤めに割いている人が多いとする。会社としては目標達成度やプロセスでの役立ち度を評価することで、ある種、社員を競わせる。そうすることが顧客からの期待に応えることでもあり、会社の社会への貢献度を高めることにもつながっていく。
一方で、会社に評価されることよりも自身の考えを貫く人もいる。管理職ではなく専門職や現場のままでいたいという人もいるだろうし、一時的に売れる商品よりも自身の考える方向性で選ぶ顧客を大事にしたいといった主張を持つ人もいる。会社に評価されるよりも、少ない社員からでもいいから身近な仲間に慕われることを重視する人もいる。
仕事は一般的なスポーツのようにシンプルではなく、自分探しの旅に卒業はない(他種目に価値がないと言いたいわけではありません、話をわかりやすくするため単純化して書いています)。だからこそ、勝敗競技と一線を画すプロレス界の中で強さを競い合うレスラーたちに、ときには同調、ときには反発しながらプロレスファンは惹かれるんじゃないかと思うのだ。
この“振り幅の広いジャンル”の中で「自分の中の答えを見つけるということ」がプロレスの面白さという話は以前にも書いてました。こちらも参照を。
・ 「一部の方の誹謗・中傷、虚言には惑わされる事無く…」新日本プロレスがファンに向け異例の発信 プロレス-格闘技 カクトウログ 2013.04.10
クリス・ジェリコは「受けの美学」というよりも「仕掛ける側の美学」とも言うべき哲学を持っている。こちらも参照を。
・ クリス・ジェリコ、世界のプロレスを背負う。そして…「ジェリコvs新日本トップ選手で(新日本は)もっと金を稼げるだろう。可能性はゼロじゃない」 プロレス-格闘技 カクトウログ 2018.01.21
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ジェリコは、リアリティをもってファンの感情をコントロールすることを徹底している面も持つ。自らが使う技は“現実的な技”であり、一部の選手相手にはかけられないものではなく、他の選手とは違うと説く。確かにイッテンヨンでも、シンプルな技が東京ドームを揺らせた。
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番組の話に戻す。新鮮に感じたのは、一時はアントニオ猪木の姿勢に否定的だった棚橋が猪木の「風車の理論」を持ち出したこと。新日本プロレスを新しい方向に導くプロセスにおいては猪木を“呪い”扱いしたこともある棚橋(一定時期における猪木の言動に思うところもあったのだろう)。しかし、プロレス本来の魅力という点で猪木の持論に通底したことが興味深くもあった。
改めて「風車の理論」を検索してみる。
・ アントニオ猪木氏の「風車の理論」について教えてください。具体... - Yahoo!知恵袋
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現在では「相手の力を最大限に引き出して、それ以上の力でそれを倒す」事で自分のみならず相手も輝かせるといった意味合いで使われていますが、もともとの猪木氏の「風車の理論」とは、猪木氏の著書の中で
「ある時期、若い選手を相手にケイコしたとき、もう力では俺の手に負えないと、ふと感じたことがあった。~略~ところが彼らが俺を力でねじ伏せようとした瞬間、フッと力を抜くと、彼らの力がまったく作用しない状態が起こった。~中略~人間は、たとえば技を決められたとき、その恐怖心で必死でもがき、それを返そうとする。~中略~もし、瞬間に意識を完全に無の状態にすることができれば、とられた腕の関節は大きく開いていくのだ。そして、相手が決める方向に体を一緒にねじることで、簡単に決め技をはずすことができる。」
といった記述にあるように、相手の技を下手によけたり真っ向から受け止めるよりも、風を受け流す風車のように、逆らわずに自分自身を無とする事でダメージが無くなるといった意味合いで使用されています。
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なるほど後者のそもそもの意味も聞いたことがある気がする。今回の番組での文脈では、トップロープからの技をなぜ受けるのかというものだったため、受け応えとしてはそぐわない。ただ、グラウンド技や投げ技ではこの対処法が合理的な場合もありそう。
プロレスについて考え始めると、時間がどんどん過ぎてしまう。番組全体として、プロレス界での個性確立を思考し続ける若手レスラーのストイックな姿勢、強靭な肉体を生むハードなトレーニングにもスポットを当てた“プロレスを伝えた”ものでした。夜更かしはこのくらいで、おやすみなさい。
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