10月31日、大仁田厚が7年ぶり7度目の引退試合に臨んだ。
盟友・NOSAWA論外による惜別と、今度こそ区切りという大仁田の決意との間で放たれたサンダーファイヤー・パワーボムは実に7発。大仁田は自らの勝利で有終の美を飾った。
・ 大仁田、涙の7度目引退「オレはプロレスが大好きです。死ぬまでプロレスラーです」 (デイリースポーツ) - Yahoo!ニュース
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7年ぶり7度目の引退を表明している大仁田厚(60)が最後の試合を終え、デビューから43年のプロレス生活に別れを告げた。最後の相手は自ら指名した藤田和之(47)と6人タッグで対戦。自らサンダーファイヤーパワーボムを7発放ってNOSAWA論外を仕留め、勝利で締めた。大仁田は「オレはプロレスが大好きです。死ぬまでプロレスラーです」と最後の言葉を残した。
熱狂の中で邪道がリングを去って行った。大仁田の最後の雄姿を見届けようと駆けつけた観衆は超満員札止めの2000人。最後の相手は長年対戦を熱望したもののかなわなかったアントニオ猪木の最後の弟子である藤田。大仁田はパワーで上回る相手に圧倒されたものの、最後はゾンビのように何度も立ち上がる宿敵の論外を自ら葬った。
試合後はリングサイドに殺到するファンに向かって最後の“大仁田劇場”を展開。「こんなウソつきで、こんな弱い男にたくさんの応援ありがとうございます」と感謝し、「一つだけ大仁田のいいところがあります。絶対あきらめないこと」などと“涙のカリスマ”節を連ねると、ファンは喝采を送った。
過去6度の引退と復帰を繰り返し、すさまじい世間の批判が浴びせられてきた。その声を「仕方のないこと。自分で決断して復帰するということは、批判されることを前提に、最終的に自分の中でどこまでやれるかという追求だったんで」と素直に受け止める。一方で、この日詰めかけたファンのように多くの熱烈な支持者がいるのも事実だ。
「本当に最後」という7度目の引退を決意した理由は肉体の限界。最初の引退の要因となった83年の左膝蓋骨粉砕骨折は完全に回復せず、階段の昇り降りもままならない。骨折は28カ所、縫った数は1499を数える。
最大の危機は93年。過密日程による疲労から敗血症を起こし、18日間も危篤状態に。医師からは「70%死ぬ」と言われた。奇跡的に意識を取り戻すが、初めて自力でベッドを降りたときには、体をコントロールできず脱糞してしまい、「もうオレはダメだな」と感じたという。それでも「何事も支えてくれたのはファン」と、熱い声援に奮い立たされた。
だが、もうその声にも応えられない。「プロレスはお金を取る。お金を取る自分の限界ギリギリというところもあって引退を決めた。お金を取るということは、最終的にみんなが納得する試合をしないといけないわけだから」とさびしげに話した。
この日は、母の松原巾江さんを初めて試合会場に招いた。リング上で涙ながらに「母ちゃん、本当に出来の悪い息子ですんません」と謝罪。巾江さんは「感無量です。批判だらけで優れた人間ではないけど、感動させて元気にさせてくれる、すばらしいところもあります」と我が子をほめた。
最後は「オレはプロレスが大好きです。死ぬまでプロレスラーです」との言葉を残した。邪道はここからどこへ進んでいくのだろうか。
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ボクも会場に足を運んだが、圧巻フィニッシュから大仁田劇場に至るまでの盛り上がりは“完全引退”ムード。恒例のリングサイド観客殺到でプレスカメラマンはリング上に上がることでしか撮影を継続できない。“いつもの光景”ではあるが、通常のプロレスからすると“異常な光景”が延々と展開していく。メイン前のセレモニーでは盟友・青柳政司、母・松原巾江さんも駆けつけた。
意外と好評だったのが、藤田和之のデスマッチ参戦。Tシャツ姿も目力の強さもゾクゾクさせる。そして、カシンと論外が凶器設定を完了したら、藤田が決めるというチームプレーがハマる。メインはシーソーゲームとなったが、このレベルの試合をやるのが限界という大仁田自身の判断なのだろう。こうして大仁田は7年ぶり7度目引退ロードを完走した。

大会ポスター。

古巣・全日本プロレスから花が届く。

Tシャツ購入者への試合前のツーショット撮影では、ファンと最後の交流。

メイン前に引退セレモニー。マスコミ各社からは記念パネルも。

杖をついてリングサイドまで登場してきた青柳館長だったが、エプロンに杖を放置し、自力歩行して大仁田と抱擁。大仁田から大きな影響を受けた人生だった。

中央は大仁田ママ・松原巾江さん。ボクは帰りの出口で「引退興行、素晴らしかったです」と声かけ。握り返してくれた手は本当に力強かったです。

いまテンカウントをやると大仁田が告げる。試合後にできるかどうかわからないという大仁田によるアドリブ。テンカウント後に紙テープも舞う。

さぁ、メインイベント。大仁田のプロレス人生を彩ったノボリの後押しを受けて大仁田レスラーとしての最後のリングイン。ファンとマスコミの数がリングサイドに膨大で、かなりの時間がかかった。この日は何本ペットボトルが消費されたんだろうというくらいに聖水も大盤振る舞い。

同じ所属団体というものはなかったものの、“信者”であることを公言してパートナーに名乗り出た鷹木信悟とKAI。最後の大仁田を支える。

最後の対戦相手側のボス入場、藤田と視察戦。

メイン出場の選手が揃ったリング上。

お得意のデスマッチ殺法で先制する大仁田軍。

怒りに火がついた藤田はこの表情!

カシンと論外がセットした有刺鉄線ボードに大仁田を叩きつける。

このまま大仁田は沈んでしまうのか?

まさかのレッドミストで形勢逆転!

藤田よ、邪道流を食らえ!

論外に標的を絞って、繰り返されるパイプイス攻撃。底が必ず抜けるほどの振り切り!

サンダーファイヤーパワーボムは、論外がまさかの連続キックアウト。大善戦に論外コールも発生。大仁田はパイプイス攻撃も挟みながら、ついには7発を敢行した。勝負タイムは16分48秒。

もうサンダーファイヤーが出始めた時点からリングサイドに集まっていたファンたち(マネしないように)。大仁田劇場の始まり。

後世にプロレス継承を! 知り合いの息子のタイキくん(?)をリングに招いた大仁田は「空気読めよ」と念押ししながら、将来の夢の「プロレスラー」との回答を引き出した。

1、2、3、ファイヤー!

すると、血の色であり還暦の色である赤いテープが後楽園に降り注いだ。
「涙のカリスマ」とはよく言ったものだ。この求心力は、プロレス界に確かに存在した。ウソをついても、弱くても、数々の大物相手との対戦を実現した逆転人生。ありがとう、大仁田厚!
実は60歳というタイミングは、天龍源一郎の引退年齢65歳、ジャイアント馬場の享年61よりも早い。現役の長州力は65歳、藤波辰爾は63歳。“繰り返し”が強調されるが、大仁田は“先に”引退したことにもなった。
オファーがあったとされる「電流爆破フェスティバル」11・3川崎大会への出場は改めて否定。
・ 引退の大仁田「俺は死ぬまでプロレスラー」 11・3試合出場は否定 (デイリースポーツ) - Yahoo!ニュース
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「また誤解されるかな?こんなことを言ったら」とニヤリとしたが、「3日後は絶対にありませんので。全金(今日の来場者に)返さないといけなくなりますので」と超花火プロレスから受けていた11月3日の大会出場オファーは受けないことは明言した。
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大会前日には、プロデュース興行「大仁田反省会」12・3新木場大会におけるレフェリーデビューを明かす。
・ 大仁田ラスト出撃 曙と高山の思い背負ってリングへ (東スポWeb) - Yahoo!ニュース
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「最近こみあげてくるのは、お前たち(ファン)がいたからやれたんだって。じゃなきゃ、やってない。だから少しでも還元したい」という思いから、12月3日にプロデュース興行「大仁田反省会」(新木場)を開催することを明かした。
プロレス人生を反省を踏まえて振り返るトークショーのほか、プロデュース試合では当然試合出場はないが、レフェリーを務める予定だ。
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大会前インタビューでは“完全引退”を明言した。
・ 大仁田厚「神に誓って、プロのレスラーはやらない」 (日刊スポーツ) - Yahoo!ニュース
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大仁田 プロレス、辞めるんだけど…プロレス、やりたいね。やりたいよ。今を生きたいんだよ…でも、やらない。プロレスは、プロだからプロレスリング。お金を取って、プロのリングに立つことは、絶対にあり得ない。プロと名が付く以上、ある程度の水準でやらないといけない…それは不可能。例えば、老人ホームなどで「ノーギャラでいいからやって下さい」と言われたら、やるかもしれない。お年寄りや孤児のために、お金を取らない無料イベント、チャリティーの場で、レスリングをやるのはあるかも知れない。プロレスに、フィクサーみたいに関わる可能性は否定しないよ。
大仁田 あと10年は絶対…ヘタしたら15年は働こうと思っているよ。俺は大仁田厚として生きたいんだ。でも…プロのレスラーとしてリングに上がることは絶対にない。神に誓って、やらない。
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これまでからすると下火にはなりそうだが、引き続き話題を提供してくれそうだ。
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